1st Party Dataの質と量(Amazon/携帯キャリア/Microsoft)
つぎに、1st Party Dataのポジショニングを確認したい。先日の記事で書いたが、日本人の「統合パーソナル情報」を構築する。これが実現すると、広告のコストパフォーマンスがとても高くなる。「統合パーソナル情報」のIDは、質と量がとても優れたものになるからだ。

図表2は、タテ軸に1st Party Dataの「Volume」、ヨコ軸に1st Party Dataの「Data Quality」を置く。たとえば、広告事業を開始した銀行(みずほ銀行や住信SBIネット銀行など)の広告ビジネスでは、銀行口座開設時に免許証など公的な書類で本人確認している。
これに対して、Google検索エンジンを使うために本人確認は不要なため、便利である反面、Googleは「誰が自社の検索エンジンを使っているのか」明確にはわかっていない。これは、銀行の保持するデータに比較すると、圧倒的に質が悪い。ボリュームについては、みずほ銀行や住信SBIネット銀行の1st Party Dataの量は1,000万〜2,500万IDと少ない部類に入る。
参考記事
Amazon
「日本のEC利用動向とAmazon・楽天の概要」によると、「楽天市場(5,104万人)、Amazon(4,729万人)、Yahoo!ショッピング(2,288万人)」とのこと。図表2右上のAmazonに限らず、楽天も同様だが、通常は、クレジットカード情報を登録してオンラインショッピングをする。そのため、本人確認済みのクレジットカード情報があるので、かなり質の高い1st Party Dataを保持している。
携帯キャリア
また、携帯キャリアなども、このような質の高い1st Party Dataが大量にあるため、今後は、カスタマーマッチの手法を応用して、ターゲティング精度を高く維持し、広告主のコストパフォーマンスも高くすることができる。
Microsoft
Microsoftの場合、公式発表の直近の数字はないようだが、「2021年4月には日本での「Microsoft Teams」利用者数は、1億1,500万人にのぼり、日経225の94%にあたる企業が利用しており、コロナ以前と比較すると約1年で利用者は4.5倍に急増」(引用:「コロナ禍で導入企業急増中!Microsoft Teamsのメリットとデメリットとは?」https://menter.jp/blog/teams1)とある。この「1億1,500万人」は当然、法人アカウントと個人アカウントを含むはずなので、延べ契約数だ。少し古い情報だが、「法人は含みませんが、家庭用Officeのサブスクは開始3年で1,000万ユーザーを超え、2020年6月時点で4,000万ユーザーを超えています」となっている(引用:「Microsoft Office 365 Consumer 会員数の推移」)。
実際にMicrosoft広告の管理画面を使っている運用者の情報であるが、「カスタマーマッチ」の設定をする画面でターゲティングできるユニークユーザー数が表示されており、現在は5,400万人程度とのことだ。あくまでも、Microsoft広告の配信できるユニークユーザー数であって、マイクロソフトアカウント数とはイコールではない。実際のマイクロソフトアカウント数はもっと多いということになる。
Microsoftは、SaaSモデルとして「Microsoft 365(Office関連ソフト)」などを提供するため、マイクロソフトアカウントには、ほぼすべての人がクレジットカード情報を登録している。したがって、1st Party Dataの質と量を比較すると、上記の楽天やAmazonに匹敵する、あるいは、凌駕するアカウントを持つ。質と量の観点から、AmazonとMicrosoftは、MetaやGoogleよりも優れている。