事例2:ハイネケン - Closer
ワークライフバランスが推進される一方、実態はまだまだ長時間労働になりがちですよね。終業後もスマホやパソコンで、メールチェックをしてしまうこともあるかと思います。そうした社会の実情に対し、ハイネケンは“Closer”という広告キャンペーンを展開しました。

“Closer”とは、キャンペーンビデオに登場するハイネケンが開発した、空想上の栓抜きの名称。「所有者のスマホやパソコンとつながっており、これでハイネケンのビールの蓋を開けると、端末が強制終了されてしまい、その日は仕事ができなくなってしまう」という代物です。もちろん物語上のギミックではありますが、ビデオでは米国内でもその労働時間の長さで知られるニューヨークのビジネス街を舞台に、ドタバタ劇が繰り広げられていきます。残業をする若手社員、飲みの席でもパソコンを開いて作業する女性、真面目な国際会議の場、ニュースを読み上げるキャスター。それぞれの場面の人物が栓抜きでハイネケンの蓋を開けると途端に電源が落ちてしまい…「じゃあ、そのまま乾杯!」というストーリーです。
ハイネケンは何年にもわたり、仲間同士でビールを飲むことの楽しさを描いてきたブランドです。今回も同様のメッセージではあるものの、「仕事を忘れてビールを飲む時間は、ワークライフバランスを保つために大切なもの」という位置付けで表現しました。時流を掴み、社会課題とブランドをうまく結びつけた好事例と言えます。
事例3:アシックス - Sound Mind, Sound Body

三つ目の事例はアシックスの取り組み。“Sound Mind, Sound Body”というブランドスローガンを2021年からグローバルで展開しています。これは創業哲学「健全な身体に健全な精神があれかし」に基づいたもの。スポーツブランドと聞くと、まず「身体的な健康」というイメージと結びつきやすいですが、アシックスは「メンタルの健康」についても言及しており、スポーツを通してブランドが人々に提供できる価値を、より広い定義で捉えていることがわかります。

メンタルヘルスの課題が深刻化する昨今、ライフスタイルを変えることが解決につながると考える生活者が多いことも調査でわかっています。加えてそのような人々は、「心の健康への対処に“医療的な解決策”より、まずは“意識の変化による改善”から取り組むべきであり、健康的な生活を送ることが、何より心の健康の維持には大事だ」と考えているようです。一般的にはライフスタイルを変える際に、新たな消費行動やブランドスイッチが起きやすいと言われているため、今後はそこに機会を見出すブランドも増えてくるかもしれません。