「ユーザーが選択できる新しい仕組み」とは?杉原氏による仮説
MZ:その「ユーザーが選択できる新しい仕組み」とは、どんなものだと考えられますか?
杉原:仮説ですが、アップルのユーザープライバシー保護機能である「App Tracking Transparency(ATT)」に似た仕組みをChromeに導入する可能性があります。
ATTとは、アプリのインストール時に「行動トラッキングを許可しますか?」と確認する仕組みのことです。これをChromeに導入することで、3rd Party Cookie機能を全部オプトアウトさせた状態から「容認するかしないか(オプトインするかしないか)」を選択させたり、あるいはその逆であったりをユーザーに委ねる可能性があります。
つまりグーグルが公約していた「3rd Party Cookieのサポート廃止」という既定路線は基本的に変更はありません。ただ、それを実施する主体がグーグルからユーザーに変わっただけなんです。
そういう意味では今回の「廃止の撤廃」は、事実上「4回目の延期」に相当すると考えています。なぜなら「新しい仕組み」の具体策が固まっていないのでそれまでの時間稼ぎになりますし、またChromeで3rd Party Cookieを活用できなくなるので、結局代替手段としてのプライバシーサンドボックスは続けなければなりません。
「廃止の撤廃」を発表するまでは、プライバシーサンドボックスに関する膠着状態が続いていたのですが、今回の撤廃を受け、プライバシーサンドボックスを修正するための時間も確保できましたしね。
もちろん、ATTのような仕組みが提供されるかどうかは仮説でしかありません。ですが、規制当局と協議中とのことなので、開発にそれほど時間がかからない何らかの仕組みであることが予想されます。
MZ:最後に、今回のグーグルの発表を受けて動揺しているパブリッシャーや広告主の方へのアドバイスをお願いします。
杉原:強調したいのは「7月22日以前と今で何ら状況は変化していない」ということです。変わった点をあえて言うとしたら、3rd Party Cookieは一部ユーザーでは使われ続け、大部分では使われなくなるというハイブリッドな状況になる可能性が高いということです。
広告主もパブリッシャーもこの混沌としたなかでマーケティングをしていかないといけません。そして、その日に向けて準備を進めなくてはなりませんし、プライバシーサンドボックスもいずれ使うことになると思うので、その動向は引き続き追っていく必要があるでしょう。IDソリューションなど、3rd Party Cookieが使えなくなったときのために代替手段の評価・検討も進めておくべきです。これまで進めてきた準備を、これからも淡々と進めるべきだということを意識してください。
MZ:杉原さん、本日はありがとうございました。