オペレーションモデルの有無で何が変わるのか
──オペレーション組織がある企業と、ない企業ではどのような違いが出ていますか?
川上:RevOps/MOpsは戦略であり戦術でもあります。すべての企業に当てはまる一律の型があるわけではありませんが、変化の多い時代において、付加価値の高い領域で競合優位性を発揮するためにも、標準的なオペレーションモデルを理解しておくことは重要です。
廣崎:戦略をどう実行に落とし込んでいくか、戦術デザインは案外どの部門でも抜けがちです。これを担うMOpsなどの各オぺレーションがないと、場当たり的な施策が増えがちになります。オペレーション組織を中心にマーケティング活動のプロセス管理をすると、各施策の下振れ要素を軽減できるという利点もあります。マーケティングの計画性が向上し、目標達成のために必要なマーケティング活動量が見えてくるようになります。
川上:営業からパイプラインが足りないと連絡が来て、急遽来月ウェビナーをするという経験がある方もいるかもしれません。それが有効な場合ももちろんありますが、オペレーションモデルなしに場当たり的な活動が中心になってしまうと、続かない成功と人海戦術により組織は疲弊してしまいます。
──たとえば、MOpsによって決められたプランが想定どおりの結果を出さなかった場合はどう対処するのでしょうか?
廣崎:もちろん、計画していた数値から外れてしまうこともあります。しかし、計画を決定した背景にはデータの根拠があるため、すぐに何かを変更することは少ないです。たとえば、四半期単位では計画は動かさず実施して、その結果を基に、次の四半期で、施策数を増やすのか、チャネルを変えるのか、施策を全部やめてイベントを行うのか、と意思決定をしていきます。
日本でも進み始めたMOps
──日本でのMOps、RevOpsの進捗はいかがでしょうか?
川上:書籍『MOpsの教科書』の反響で「これまでやってきた仕事はMOpsだったんだ」と再定義され、組織化されるケースは増えています。また、テクノロジーの本質的な活用や、属人性、計画性に対して課題を感じていた方が、フィールドとオペレーションを分ける動きをされ始めたのだと感じます。RevOpsに関しては、より広範囲にわたる組織変革の取り組みでもあり、日本ではこれから取り組む企業がまだ大半です。マーケティングと営業の連携がうまくいかない問題や、生産性向上を目指したDXがテクノロジーに振り回されてしまっているなど身近な問題の多くはRevOpsで解決できることを理解いただければ、変わってくるのではないでしょうか。
──どのように進めるとよいとお考えですか?
廣崎:多くの場合MOpsを始めると、マーケティングの組織や運用方法が変わります。組織的な変革につながり、組織図やツール、人員の変動が生じます。そのため、最初から部門横断で行うのではなく各部門内でオペレーションチームを作り、その後RevOpsとして統合する流れになるかと思います。
川上:既に何らかのオペレーション組織があるならば、そこから拡張してRevOpsを担う組織になっていくのが現実的かと思います。オペレーション組織がない場合も、一足飛びにRevOpsを行うことは現実的ではないでしょう。
サイロ化のリスクを避けるために、将来的な理想形を描いた上で、今の課題やリソースを見ながら、最適なオペレーション組織を段階的に作っていくとよいでしょう。
──マーケティング部門がその旗振り役としてできることはあるのでしょうか?
廣崎:組織的な変革につながる取り組みなので、初期から経営層を巻き込み、あるべき姿をデザインした上で1つひとつステップをこなしていく必要があります。ボトムアップでできる部分もありますが、組織全体で推進していくにはある程度トップダウンの力が必要です。収益への貢献度を数字で出すことにこだわり、理解を得ていくことが重要でしょう。
川上:CMOなどトップの方は、レベニュー成長がゴールだという共通認識を生み出すことが大切です。マーケティングだけの生産性を上げるのではなく、レベニュープロセス全体を通して、貢献をしていくことを認識した上で、経営層の支持を得ていく必要があります。