Googleへの反トラスト法違反判決、その影響は?
アメリカ連邦地裁がGoogleの反トラスト法(独占禁止法)違反を認める判決を出した。日経の記事「Googleに事業分割案 米当局、40年ぶりの「解体」視野」によると、Microsoftの1998年の同様の訴訟などに照らして、Googleの控訴、そして、和解などの決着に至るまでには相当の時間がかかると考えられる。Microsoftの場合、1998年にはじまり2010年まで続いていた。その約12年の間に、Microsoftの革新性は失われ、業績は低迷した。ここ数年のMicrosoftのイメージは復活を果たした感じだが、復活までに20年ほど経過したことになる。おそらく、Googleの場合も、かなりの痛手を負うことになってしまうだろう。
Googleのミッションが時代遅れであり、行き詰まることになると感じた理由は、(1)「データの権利を棚上げ」、(2)「世界中の情報を整理することは不可能」、(3)「D&Iに反する」の3つだ。そして、私は、Googleのミッション自体が、この会社が独占禁止法違反を犯してしまう元凶だと考えている。だから、Googleは、ミッションを変更するべきだ。そうしなければ、世界の役に立つ企業にはなれない。独占禁止法に違反するのは、恥ずべき行為だと理解するべきだ。なぜなら、世界から健全な競争と多様性を、つまり、D&Iを奪っているからだ。
最初に、Googleのミッションに違和感を持ったのは、Google EarthやGoogle Street View が出た頃だった。たとえば、イラクなどにある英軍基地の画像をぼかしているなどの指摘(参照)が相次ぎ、人の顔が映っていてプライバシー侵害だと指摘された頃だ。
注記:Googleはその後、人の顔や車のナンバープレートにぼかしを入れるためのテクノロジーを開発している(参照)。
Google EarthやGoogle Street Viewには度肝を抜かれた。そして、Googleのミッションが掲げる「世界中の情報」とは、理想論としては、「全宇宙の情報」なのだと理解した。ここには当然、様々な権利侵害のリスクがついて回る。情報やデータには、原理的に、権利者が存在する。また、オープンウェブの情報だけを収集するならまだしも、Google EarthやGoogle Street Viewとなると、国家機密情報などにも抵触する可能性が出てくる(参照:「『Google Earth』で隠されている「国家機密」」)。
私が知っているGoogle社員の方々はみんな、良心的で人徳のある人たちだ。だが、「リスクを覚悟して新しいことにチャレンジしなければ、世界を変えることはできない」という使命感もみてとれる。素晴らしいと思う反面、一歩間違えれば、既成の法的枠組みや社会的慣習・因習とのコンフリクトを生む。「世界中の情報」を収集し整理するためには、ときに、法を犯してもよいのである。そんな危険な思想と表裏一体にみえることもある。