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マーケティングの近未来

Googleのミッションは時代遅れになったのか?

生成AIの登場で検索エンジンは過去の市場になった

 検索エンジンという市場は、生成AIの登場で明らかに過去のものになった。そんな過去の市場を支配するために、Googleは控訴するつもりらしいが、過去にしがみつくのは醜悪だ。やめておいたほうがいい。それよりも、もっと未来に目を向けるべきだ。そうしなければ、今後のAI開発競争に集中できない。以前のMicrosoftのように競争力を削がれてダメになっていく。Googleには、過去のMicrosoftの二の舞は避けて欲しい。これからも、いつまでも、Googleには、世界のテクノロジーをリードする革新的な会社であって欲しい。

 Googleは、市場の健全な競争を損なう行為を繰り返してきたということなのだが、ここでいう「検索に関するデータを競合他社に提供する」ことの意義には、検索エンジンは多くのユーザーがいるほうが開発に有利だという背景がある。多くのユーザーが使うことによって、ユーザーの検索データを学習しシステムが最適化されていく。そのため、仮にMicrosoftなど他の企業に同じ技術力があったとしても、ユーザー数が多いほど、検索エンジンの開発に、技術的には有利になる。それを阻止するために、データを競合他社にも開放させるのだ。

 また、Googleの技術が本当に優れていて検索エンジンの利便性が高ければ、Appleに多額のお金を支払って、Google検索をiPhoneの標準にする必要はない。Google検索が圧倒的に優れていて、一般のユーザーにとっても明確にそれがわかって、みんなが好んで使うのであれば、放っておいてもユーザーが増えていく。ユーザーが自発的に使うはずなのだ。だが、Googleは、Appleにお金を支払ってきた。自信がないと思われても仕方がないし、市場支配を狙った反競争的な行為だと指弾されてもやむを得ない。

 もう一度、Googleのミッションをみてみよう。

「Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」

 オープンウェブの情報をクローラーで収集・整理して、「世界中の人」に使ってもらえるようにするには、Appleにお金を支払ってでも、独占禁止法に抵触したとしても、iPhoneユーザーにも、Googleを使ってもらう義務に近い意識がある。そうしなければ、「世界中の人」に使ってもらうことができないからだ。お金を支払ってでもAppleユーザーにも使ってもらわないと、「世界中の人」に使ってもらうという目的は達成できない。「世界中の人」というミッションがそもそも、独占禁止法と相性が悪いのだ。

 その結果、「D&Iに反する」ことになる。「世界中の人」が、一つの検索エンジンを使っている世界。他の検索エンジンを包摂する(Inclusion)余地はない。そこには、当然、検索エンジンの多様性(Diversity)も認められない。どこか、独裁体制のような、専制国家のような、そんなニュアンスも感じ取れるのだ。Googleのミッションを達成するには、多様性と包摂性を犠牲にする必要がある。そんな社会は、息苦しいのではないか。

 1998年Google創業当時、Diversity and Inclusionは、現在のようには、重視されていなかった。だから、仕方ない。技術力は素晴らしいと思う。だが、世界的な価値観の変化を見通すことはできなかった。未来を予測するのは困難だ。Googleでも、できなかった。いや、誰であっても、難しいと思う。Googleを責めるつもりはない。Googleは、神ではないのだから。

 私は1998年当時、シリコンバレーで仕事をしていた為、そのころから、Googleを使ってきた。Googleのファンであり、ヘビーユーザーだった。だが、Googleのミッションは、時代遅れになってしまった。1998年当時、GDPRもなかった。プライバシー保護についても、今に比較したら、それほど厳しくなかった。データ権については、概念すら知られていなかった。だが、時代は変わった。潔く、Googleのミッションは、変更するべきだ。そうしなければ、Google自体が時代遅れになる。「解体」されるよりマシだ。ミッションを変更して、ゼロからやり直す。そんな覚悟が必要だ。

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再生の方向性

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/09/03 08:00 https://markezine.jp/article/detail/46707

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