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消費者の欲望を紐解くトレンド事例

空前のグミブームが起きている「欲望的背景」 ピュレグミなどヒット商品を展開するカンロに聞くインサイト

グミの特徴は「自由度の高さ」と「多様性」

DDD:我々もグミが現代の人々を惹きつける理由を分析してきたのですが、その1つはまさに「多様性」にあると考えています。グミは色や形、弾力などの自由度が非常に高いですよね。それにあわせ、ターゲットもあらゆる方向へ自由に拡張できるのがグミの特性であると思います。だからこその難しさもありそうですが、商品開発の際はどのようなところを重視されているのでしょうか?

河野:今、グミ市場は商品があふれていますから、いかに差別化していくか、各社知恵を出し合っている状況です。そんな中で、弊社が重視しているのは「できるだけ長くお客様のそばに居るためには?」という視点です。

 具体的には、単なるお菓子ではなく「持っていると気持ちがアガる」「かばんに入っているだけで少し嬉しくなる」「気分転換の相棒」といった位置づけを目指しています。

カンロ株式会社 マーケティング本部 ピュレグミ・カンデミーナブランドリーダー 河野亜紀氏
カンロ株式会社 マーケティング本部 ピュレグミ・カンデミーナブランドリーダー 河野亜紀氏

DDD:なるほど。となると、色々な場面でユーザーニーズを捉える必要がありますよね。インサイト視点で商品開発やマーケティングを考えられることが多いですか?

河野:そうですね。最近は特に定性調査に力を入れ、インサイト視点を意識しています。ピュレグミもずっと順風満帆なわけではなく、「もう一度お客様に振り向いてもらうにはどうしたらいいのか?」を考えていた時期がありました。ユーザーインタビューで深掘りし、「これなんじゃないか?」と見つけたインサイトをもとに、ここまで作り上げてきた形です。ピュレグミをご愛好下さっている方はもちろん、「グミを食べる人の日常」にまで視野を広げ、リサーチを行っています

DDD:冒頭でSNSの影響も大きいとおっしゃっていました。SNS上の反応も参考にされていますか?

長岡:担当している商品がお客様にどう評価されているか、どのような方が反応しているかをウォッチする際、一番わかりやすいのがSNSだと感じています。SNSでの反響次第で、売れ行きが大きく変わるケースが最近は特に多いので、社内でもSNS上での数値を共有しながら展開を考えることが多いですね。

SNS時代ならではの商品企画の在り方

DDD:カンロさんはグミッツェルやカンデミーナなど色々なグミ商品を展開されていらっしゃいますが、その中でも私たちが注目したのが「空想果実」です。今回の分析にあたり、たくさんのグミを買い集めて試食もしたのですが、「空想果実」は店頭で見つけるのにとても苦労しました。非常に斬新な商品ですが、開発のスタート地点はどこにあったのでしょうか?

カンロ「空想果実」シリーズとは

グミの自由度の高さを活かし、空想上の果実の味や食感をグミで表現した、好奇心を刺激する、これまでにない体験型商品。商品はHPやSNSと連動しており、まるで本当に幻の果実が実在するかのような徹底した世界観を作り上げている。「空想果実」を口にする時、この果実は一体何ものなのか? 今自分は何を食べているのか? とイメージを膨らませながら、空想の世界とまだ見ぬ果実の味わいを楽しむことができる

空想果実 ウチャチャの実
空想果実 ウチャチャの実

長岡:実は、空想果実は、弊社とお付き合いのあるデザイン会社さんとの共創で生まれた商品なんです。グミに限らずですが、自分が担当している商品のことばかり考えていると、担当者の視野は狭くなってしまいます。そこで、様々な商材を扱っているデザイン会社と「こんなものがあったら面白いんじゃない?」というコミュニケーションを日頃からしており、その中で生まれたのが空想果実でした。

カンロ株式会社 マーケティング本部 ブランド開発部 第2ブランドチームリーダー 長岡真聡氏
カンロ株式会社 マーケティング本部 ブランド開発部 第2ブランドチームリーダー 長岡真聡氏

 空想果実は、「未体験のワクワクをお届けする」というコンセプトで商品設計をしています。グミは試し購買のハードルが他の商品と比べて低いという特性があり、新しい味や食感の商品が出たら“とりあえず買う”という層が一定数存在します。だからこそ、従来のフルーツ味・飲料の味といった枠組みではなく、“そもそも食べたことのない味”を提案し、皆さんの好奇心をくすぐるアプロ―チが可能なわけです。他のカテゴリーだとなかなか空想果実のような商品は実現しないでしょうね(笑)。

 また、空想果実ではお客様との共創も意識しています。たとえば、SNS上で「こんな果実があったらおもしろそう」などの発信があったら、商品企画でも参考にさせていただきたいと考えています。SNS上での発信が盛んなグミだからこそ実現できる「双方向性」があると思うのです。

DDD:「空想果実」なので、現実世界には存在しない果物をストーリー込で作り上げて、商品に落とし込んでいるわけですよね。

長岡:そうです。現実世界にはない果物ではありますが、私たちは「本当にあるもの」と妄想して、かなり細部まで設定やクリエイティブをこだわって作っています。「大人が真剣にふざける」ことを大切にしていて、ただ空想上の果物を商品に落とし込むのではなく、もはや「我々の中では本当にあるもの」として真剣に空想上の果実に向き合っているような感じです(笑)。

DDD:ウチャウチャの実のグミを試食した時、「何かに似ているけど、食べたことのない味」がして(笑)。すごく不思議な感覚でした。こういった「妄想」「架空」の設定を界観に取り入れているブランドが最近増えている印象があり、DDDとしても注目しています。

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グミが満たしている現代人の欲望

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/22 08:30 https://markezine.jp/article/detail/46950

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