あえてコンバージョンを追い求めすぎないワケ
MZ:改めて、企業がアプリを運用する上で気をつけるべき点は何でしょうか。
宮本:私たちの行う施策がユーザーにとって本当に必要なものであるかをユーザー視点に立って考えなければいけません。たとえば当社では、あえてコンバージョンを追い求めすぎないように意識しています。コンバージョンだけを追求しすぎると、サイト上に遷移先のボタンを多数設置するなど、ユーザー本位ではない施策につながってしまうこともあるからです。
このような施策を行ったことで、ユーザーが離れてしまっては本末転倒です。そのため当社では、たとえ新たに実装した機能だとしても、ユーザーの利用状況やフィードバックなどを踏まえて柔軟に変更するようにしています。

MZ:内容によっては真逆の意見がユーザーから届くケースもあると思いますが、意見の採用可否はどのように判断していますか?
髙橋:当社にとって「住まい探しのユーザー」と「不動産会社」の両方がお客様にあたります。これは、「ユーザーにとって良い施策でも不動産会社にとって困る」といった可能性も生じることを意味しています。そのため先述の定期的なユーザー調査では、定性と定量、短期と中長期など複数の指標を設け、双方にとって不利益にならない落としどころを判断するようにしています。
立花:双方の意見を踏まえて統合的な体験を設計できるのは、当社の組織が持つ強みも役立っているかもしれません。「業界全体をより良くしたい」という想いが前提としてあり、そのためにどうすべきかを職種に関わらず対等に議論できる組織であることが、リクルート全体の強みです。
プロダクト側にも、営業側にもこの想いがあるからこそ、ユーザーと不動産会社の双方に寄り添いながら、改善を行うことができています。
住まい探しのパートナーとして生涯選ばれ続ける高LTVなサービスに
MZ:最後に、SUUMOが今後取り組んでいきたいことや、展望について教えてください。
立花:多くの人にとって住まいを決めることは、人生での大きな決断の一つだと思います。理想の住まいに住めるのは幸せですし、納得いかない住まいであれば生活自体も楽しくなくなってしまいますよね。ですので、SUUMOは理想の住まいを探すための「理想の媒体」となり、日本中の住まい探しユーザーがより早く簡単に「住みたい」と思える住まいに出会える場所にしていきたいです。
髙橋:2021年5月に障害者差別解消法の一部が改正され、2024年4月から施行された改正法では民間事業者に「合理的配慮の提供」が義務化されました。ウェブアクセシビリティを含む環境の整備を計画的に進めることが求められています。当然ながら、SUUMOにおいても誰もが使いやすいUI/UXに改善していく予定ですし、その他にも物件情報の連携スピードをさらに早くするなど、改善する余地は機能面・デザイン面の双方にまだまだ多数あると考えています。
一生使い続けてもらえる「住まい」アプリとなれるように、これからもプロダクトの改善に取り組んでいくつもりです。

宮本:パーソナライズされたコミュニケーションに対する需要の高まりから、近年、モバイルアプリへの注目度が非常に高まっています。アプリ上での最適なコミュニケーションを通して、若年層から高齢層まで幅広い年代の方々に一生を通して選ばれ続けられる高LTVなアプリを目指していきます。