トラッキング分析による「ロイヤルカスタマー化プロセス」解明
多くの場合、顧客がロイヤルカスタマー化する前には、複数の段階が存在する。まず、製品カテゴリーを認知していない潜在顧客がおり、その後に競合他社製品との併用段階やライトユーザー段階を経て、最終的にロイヤルカスタマーへと発展していく。各段階から次の段階へと移行したと言えるような行動が顧客に起きた際に、「どのような要因が決定的な役割を果たしたのか」を特定することが、ブランドに求められるだろう。
保坂氏によると、「うちれぴ」には特定の商品やブランドのファン化には至っていないものの、料理に対して高い関心を持つ“潜在的なロイヤルカスタマー”が集まっている。そんな「うちれぴ」ユーザーのデータを活用すれば、有効な分析対象とともに、段階を移行する要因や施策のヒントを得られるという。
たとえば焼肉のたれの事例分析では、二人の異なるユーザーの購買行動とレシピ閲覧パターンを比較し、ロイヤルカスタマー化を促す戦略の示唆を得た。
一人目のユーザーは、焼肉のたれの特定商品を高頻度で購入しているヘビーユーザーである。このユーザーの購買タイミングとレシピ閲覧履歴を照合すると、焼肉を調理する際だけでなく、焼肉のたれをアレンジレシピの調味料として活用している傾向が見られた。
二人目のユーザーも同様に高頻度で購入しているが、前述商品だけでなく、競合商品も併用している。このユーザーの場合、分析対象の焼肉のたれは主にアレンジレシピ用に購入し、焼肉調理時には競合商品を選択する傾向が見られた。
これらの分析結果から、製品のマーケティング戦略に関する有益な示唆が得られる。たとえば、焼肉のたれの汎用的な調味料としての使用法をアピールすることで、用途の拡大と購買頻度の増加を図れる可能性がある。また、焼肉調理における自社製品の優位性を強調することで、競合商品への流出を防ぐ戦略も考えられるだろう。
生活者の「食」インサイトにより深く迫るために
今後の「うちれぴ」の展望について、保坂氏は「ユーザーに対して、メーカーが期待するアクションをさらに活性化させる取り組みにも力を入れていきたい」と語る。たとえば、保坂氏が今後「うちれぴ」に導入するべく開発を進めているポイントシステムもその一環だ。同システムでは、特定のレシピの閲覧や商品の購入に対してポイントを付与。獲得したポイントに応じて、メーカー商品のプレゼントや特別な工場見学への招待などの特典を提供することで、ファン化を促進することを目指しているという。
最後に保坂氏は「『うちれぴ』はまだ試行錯誤している段階です。今後もより多くのメーカー様に参画していただくことで、『食』をトラッキングする共創プラットフォームにしていきたい」とセッションをまとめた。