要は「調べること」、なのに難しく感じるのはなぜなのか?
━━その場合、どうなるのでしょう?
たとえば「水」の新製品を出したいのでリサーチしたい。そんなご相談を受ける時、私はまず必ず「何を知りたいのか」をお聞きします。最初は「どんな水を出したら良いのかわからない」という答えが返ってきたとしても、「ではどんなことがわかると、どんな水を出したら良いかのヒントになるのでしょうかね?」と話を進めます。
そうすると、知りたいことがどんどん出てきます。世の中には既にどんな水が提供されているんだろう? どんな水が売れているんだろう? どんな人がどんな水を購入するんだろう? なぜ人気の水は人気であり、そうでない水は見向きもされていないんだろう? 地域で違いはあるのだろうか?
このように知りたいことを具体化せずに「新しい水を出すために、どんなリサーチをしたら良いのかわからない」という漠然とした悩みに四苦八苦している時は、何を調べて良いのかわからなくなっていることが多いんです。
知りたいことが明確になったら、「さて、役に立つ情報を、費用や時間的にも効率的に入手するにはどうすれば良いかな」と考えます。これを私は「リサーチをデザインする」と呼びます。リサーチの仕方や分析方法やまとめ方など考えることはたくさんあります。でも「こういうふうにしたら、わかりやすくなるな」「こうやったらもっと生の声を聞けるな」というように、工夫次第でいくらでも無限に可能性が広がります。それがリサーチの仕事の醍醐味です。
私の経験上、「役に立たないリサーチ」というものは一切ありません。リサーチはクリエイティブな仕事だと思いますし、好奇心さえあれば本当に楽しい仕事だと思います。
そうは言っても多い「役に立たないリサーチ」、どうすれば活用できる?
━━「役に立たないリサーチはない」というお話でしたが、米田さんの著書『「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書―問題解決マーケティングの秘訣は、これだ!』の中に「もったいないリサーチ」の話が出てきます。これはどういうものなのか、なぜもったいないリサーチが起こってしまうのかお聞かせください。
たとえば、定期的に実施しているリサーチが形骸化されてしまい、「もったいない調査」になっていることがよくあります。「毎年実施していて、200ページにもおよぶレポートが出てくる」「手間もコストも時間もかかっているけれど誰が使っているのかわからない」というタイプのリサーチですね。
こうした場合に、「止めたらいかがですか」というのは簡単ですが、それはあまりにも乱暴過ぎる。そんな時、私は「このリサーチは誰が何に使っているのか聞いてみたらいかがでしょう」と提案します。
━━「リサーチを使っている人が誰なのかリサーチしましょう」ということですね。
そうです。まずそれをリサーチすれば、本当にまったく誰にも使われていないということが判明するかもしれませんし、200ページ中の10ページだけは重要会議で使われているということがわかったりもします。
そうすると、悩んでいた担当者にもリサーチの活用実態が掴めてきます。「このリサーチのこの部分がこういう業務に役立つのなら、使ってくれているA部だけでなくB部にもC部にもその使い方を紹介してみたらどうだろう」「この部分は不要だから次回から削除してもいいな」といった考えが浮かんできます。
現状のヒアリングをするついでに、「どんなデータがあれば良いのか、何が必要なのか」という点について御用聞きをすることもお勧めです。そういった情報を提供できるようになると、それまで活用されずに形骸化していたリサーチが一気に生き返ることも少なくありません。
常に意識していただくと良いことは、活用できるリサーチにしたいなら「活用されるようにリサーチをデザインする」ということです。この意識を持っていただくだけで、色々なことが変わってくると思います。