3度目の上陸、勝機はある? 「おいしい不要品」のマーケティング戦略
MZ:なぜ、2024年に3度目の日本上陸に挑むこととなったのでしょうか? このタイミングに勝機を見出した理由を教えてください。
村上:チューイングキャンディやグミの市場が大きく成長しているタイミングだからです。オーラルケアのためにガムやタブレットを食べていた大人が、コロナ禍あたりからリフレッシュ感や甘味を求めるようになり、トレンドが変化してきています。グミは数年前からブームとなっていますよね。そして、市場を押し上げているのは20代の購買者層です。まさにスキットルズが求めている市場とターゲットが重なるため、再ローンチする絶好のタイミングだと考えました。また、2024年はスキットルズが50周年を迎える節目の年であることも、後押しとなりましたね。
MZ:過去にはマーケティングやプロモーションの不足が失敗要因の1つとなっていました。今回はどのような戦略を考えているのでしょうか。
村上:今回は大々的にプロモーションやキャンペーンを実施しています。スキットルズ本来の「斜めから物事を見る」コミュニケーションを、日本人のインサイトに落とし込んで表現しているのは、従来になかった大きな変化ですね。タグラインは「おいしい不要品」。お菓子はおいしいけれど、栄養バランスに優れているわけでもなく、必需品ではないことを再認識してもらうメッセージとなっています。
“食べることをおすすめしない”異色のコミュニケーション
MZ:エッジの効いたタグラインで展開されている今回のプロモーションですが、具体的な実施施策についても教えてください。
村上:実施施策は4つあります。
1つ目は、テレビ・WebでのCMです。一時的な熱狂のなかで行列に並んだり、人混みをかき分けたりしてスキットルズを手に入れるけれど、ふと我に返ると「なんでそこまでして買ったんだろう」と自分の行動が理解できないというストーリー構成になっています。「消費行動のあるある」を表現し、スキットルズは並んでまで買うような製品ではないことを伝えています。
村上:2つ目は、「応募できない応募キャンペーン」です。製品が無料で当たるキャンペーンは気軽に応募しがちですよね。本キャンペーンでは「本当に必要ですか?」と何度も問いかけたり、応募要項を読み込まないとわからない質問をしたりして、安易に応募しないよう、冷静な判断を仰ぐ異色のプレゼントキャンペーンとなっています。
中村:3つ目は、トレインジャックです。東京メトロ5路線の車内広告にて、消費者やバイヤーから実際に寄せられた声の中から残念な声だけを掲載しました。「仕事の合間のリフレッシュに全然ならない」「どうぞ勝手に上陸してください」など、あえて辛口な意見を集めています。ブランドカラーである赤色を全面に使い、かなりインパクトのある広告となりました。
中村:4つ目は、ショート動画の配信です。「おいしい不要品への口撃」と題し、管理栄養士、元教師、歯科医師にスキットルズをお薦めしない理由を語っていただいています。肩書のある方の発言は信頼しやすいという心理を逆手にとって、皮肉的に表現しました。