トリマの特徴は起動回数の多さ
2022年1月に、インクリメントPから社名を変更したジオテクノロジーズ。社名は変わったものの、主な事業は地図データの制作・提供だ。北谷氏は同社で、ポイ活アプリ「トリマ」のマーケティングとマネタイズを担当している。
トリマはユーザーが移動を通じて報酬を獲得できるポイ活アプリだ。2020年10月のリリース以降、順調にダウンロード数を伸ばしてきた。2024年10月には2,000万DLを突破したという。
移動以外にも、アンケートへの回答や動画の視聴、ショッピングなどを通じて報酬を得ることが可能。ユーザーは全国に点在し、男女比や年代の分布にも偏りのない点が特徴だ。
もう一つの特徴は「起動回数の多さにある」と北谷氏。一人あたりの平均起動回数は約7回/日で、日中の移動を通じて貯めたマイルを帰宅後に獲得したり、自宅のWi-Fi環境下で動画を視聴してマイルを獲得したり、日常の様々なシーンで利用が発生しているという。「起動回数が多いため、アプリ内広告との接触回数も必然的に多くなる」と北谷氏は強調する。
ポイ活ユーザーとカジュアルゲームの親和性
そんなトリマから、2024年6月に関連アプリ「トリマソリティア」が誕生した。ユーザーはトリマとトリマソリティアを連携すると、ソリティアをプレイするだけでマイルが獲得できる。
関連アプリのリリースは、トリマ事業において初の試みだ。ソリティアを選んだ動機として、北谷氏は「ポイ活ユーザーとカジュアルゲームの親和性」を挙げる。
「元々、トリマのアプリ内に『トリマゲーム』というカジュアルゲームのコンテンツを入れていたのですが、この利用者数と利用回数が非常に多かったのです。ポイ活層の中にゲーム好きが数多くいるとわかりました。ゲームのクオリティを高め、継続的にプレイしてもらう目的で、ネイティブアプリとして開発することを決めました」(北谷氏)
開発にあたっては「パズルde懸賞」シリーズで知られるオーテの協力を得た。関連アプリのリリースは社内に前例がなかったことから、決裁や法務チェックのプロセスにやや苦労したものの、開発着手から提供開始までの期間は約3ヵ月とスムーズに運んだ。
トリマソリティアのマネタイズを支える仕組み
トリマソリティアでは、アプリ内広告の掲載によってマネタイズを行っている。アプリのインターフェースにポップアップとして表示される「インタースティシャル広告」と、動画の視聴など特定のユーザーアクションと引き換えにマイルを付与する「リワード広告」から発生する収益が、全体のほとんどを占めるそうだ。
「トリマからの送客を基本としているため、それ以外の集客施策はほとんど実施していません。トリマソリティアを積極的に利用するユーザーは、あわせてトリマも利用し続けてくれるため、後者のアクティブ率が高まりました。期待以上の効果と言えます」(北谷氏)
トリマソリティアのマネタイズを支えるソリューションの一つが「Moloco SDK」だ。提供元のMolocoは、機会学習を活用した様々なソリューションを提供している。DSPの「Moloco Ads」を通じた年間広告出稿額は10億ドルを超え、日本円にして1,500億円以上の規模を誇る。
Moloco SDKは、機械学習モデルを用いてアプリ内広告の収益最大化を実現する。2023年4月にリリースされ、導入企業は100社を超える。Molocoの簡(チェン)氏によると、同ソリューションの強みは三つあるという。
中間マージンを削減してリターンを最大化
第一の強みは、広告主のデマンド(出稿)に直接アクセスできる点。通常の広告取引においては、アプリパブリッシャーと広告主の間に中間業者が入るため、広告収益の20~35%は中間業者に対するマージンとして支払われる。しかしながら、Moloco SDKを導入すれば中間業者を排除した広告取引が可能となり、アプリパブリッシャーは広告収益の最大化を、広告主はROASの向上を目指せるわけだ。
第二の強みは、機械学習を通じた入札の最適化にある。Moloco SDKは過去のデータを基に、コンバージョンに至りやすいユーザーやLTVの高いユーザーなどを見極める。高価値ユーザーに対する入札を増やすことで、アプリパブリッシャーと広告主の双方にとって最適なCPM(Cost Per Mille)を実現できるという。
第三の強みは、多様な広告フォーマットに対応している点だ。アプリによって出稿可能なフォーマットや高い効果が見込めるフォーマットは異なる。「Moloco SDKなら、各アプリに応じて最適なフォーマットを選択し、ターゲットユーザーとの正確なマッチングも可能」と簡氏は語る。
ユーザーの平均単価が向上!
収益の最大化と同等に、アプリパブリッシャーが重要視しているのはブランドセーフティだろう。Moloco Adsでは厳しい基準を設けてクリエイティブ審査を行っている上、アプリパブリッシャーの設定に応じて特定のカテゴリーに当てはまる広告を配信から除外する。これにより、アプリとユーザーの信頼関係を維持し、結果的に収益の最大化も実現する流れだ。
「Moloco Adsで高価値ユーザーを獲得し、Moloco SDKでアプリの収益を最大化する。増えた収益を再投資すれば、さらなるユーザーの獲得とアプリの成長を目指すことができます。このようなエコシステムの構築をMolocoでは追求しているのです」(簡氏)
Moloco SDKを導入した結果、トリマソリティアのARPU(Average Revenue Per Useの略、ユーザーの平均単価を示す指標のこと)は向上したそうだ。北谷氏は今後の目標として「ロイヤルユーザー数の増加」を挙げる。
「先日、トリマソリティアのクリアタイムを競う世界大会を開催しました。数多くの方に参加いただけたため、今後もこのようなイベントを継続的に催し、ロイヤルユーザーを増やしたいと考えています」(北谷氏)
ポイ活“ガチ勢”向けの新たな挑戦
「トリマソリティアに続く第二・第三の関連アプリもリリースを検討中」と語る北谷氏。引き続きオーテと連携し、カジュアルゲームを中心に開発を進めている。「将来的にはシリーズ累計100万ダウンロードを目指す」とのことだ。
トリマ事業におけるジオテクノロジーズのチャレンジは、関連アプリのリリースだけにとどまらない。これまではネイティブアプリを通じてポイ活サービスを提供してきたが、2024年9月にポイントサイトをオープンした。
「今まではポイ活のライト~ミドル層に向けて、気軽に楽しめるアプリを提供してきました。ポイントサイトでは、より大きな報酬を獲得したい“ガチ勢”にも満足いただける機能や仕組み、案件を用意しています」(北谷氏)
ポイントサイトの運営にあたっては、アクティブユーザー数をKPIに設定しているという。既に多くのユーザーを抱えるアプリからサイトへ送客するとともに、SEOなどの集客施策にも注力する考えだ。
複数のポイ活サービスがしのぎを削る中、トリマは「ポイント還元率の高さ」を強みとしてきた。「ポイントサイトにおいても、競合他社より高い還元率を目指している」と北谷氏は語る。トリマの挑戦に今後も期待したい。