Duolingoが「Social first」を掲げた理由
佐藤(MOTTO):次のキーワードは、Duolingoの「Social first」ですね。
水谷(Duolingo):Social firstとは、ソーシャルメディアでの広がりを最優先に考えてマーケティングを展開していく考え方です。日本でも、グローバルでも第1の戦略として取り組んでいます。

水谷(Duolingo):ここで重要なのは、単純に「ソーシャルメディアで何を投稿すべきか」という視点ではなく、「施策によってどれだけの自然な拡散(Organic Impression)が生まれるか」という点に着目することです。これを判断するために、2つの基準を設けています。
1つは、「人が人に話したくなるほど楽しい/おもしろいか」。言語学習の最大のハードルは、モチベーションの継続です。継続してもらうために、楽しいと思ってもらえるような体験を重要視しており、マーケティングも“楽しい”ということをコアに据えています。
2つ目は、「ブランドナラティブから始まっているか」。Duolingoには過去学習者さんと作り上げたブランドストーリーがあり、その中心に、DUOという緑色のフクロウがいます。DUOは、レッスンをやってもらうまで諦めないキャラクターです。
施策を例に挙げると、DUOに扮する人がパルクールで参加者を追い掛け回す鬼ごっこのイベントを開催しました。ブランドナラティブでいうと、「レッスンするまで、ずっと追いかけるよ」です。イベントには数百人しか参加できませんが、ソーシャル上では700万以上のインプレッションを獲得、最終的にはキャンペーンで総インプレッション数が1,600万を超える結果となりました。

ソーシャルでのバズで、アプリへの流入は生まれるか?
佐藤(MOTTO):マーケターとして興味深いのは、投稿では英語学習について何も言っていないことです。一般的には、直接的な機能訴求をしがちですが、Duolingoは「楽しさ」を中心に訴求しています。
水谷(Duolingo):ソーシャル上では、人を楽しませることに注力しています。ブランドイメージを作ることで、外国語を学びたくなったときの第一想起になればいいと考えているからです。実際に、グローバルでも日本でも、流入元の8割は口コミですし、これまでも口コミによって成長してきました。Social firstを掲げているのも、ソーシャルが口コミを加速させるからです。

【画像右】話題になった漫画キャラクターをオマージュした投稿も、Xでのバズを生んだ
佐藤(MOTTO):ソーシャルが、アプリのダウンロードに効果があるのか気になるところです。この点、どうやってソーシャルの効果を確かめていますか?
水谷(Duolingo):仕組みは単純で、新規ユーザーに対して「どこで知りましたか?」というアンケートをオンボーディングに挟んでいます。たとえば、Xで1000万インプレッションを超えるようなスパイクがあると、この回答でもXが跳ねます。私自身が様々なアプリに携わってきた中で、SNSでバズってもアプリの流入につながらないというのが定説でした。でもDuolingoの場合は、商材と戦略、どちらが効いているのかはわかりませんが、グローバルでもソーシャルが効果を発揮しています。