帰宅中の生活者にアプローチできるSpotify広告
MarkeZine編集部(以下、MZ):電通では、サントリー「金麦」のプロモーションの一環として、Spotify広告を活用した音声広告シリーズ「待ち麦物語」の展開を支援しました。貴社が今回、キャンペーンの手段として“音声”の活用を決めた理由をお聞かせください。
林田:金麦は毎日家で飲むのにふさわしいビール系飲料として多くのお客様に飲んでもらいたいと考えているブランドです。そのため、晩酌に向かう帰宅時間にユーザーがどのようなメディアと接点を生み出せているかが帰宅時間帯のコミュニケーションが施策を考える上で重要なポイントでした。
そこで、当社が帰宅時間帯の生活者による各メディアでの接触状況を調査した結果、特に高い接触率を有していたのが音声メディアでした。その音声メディア中でもSpotifyは「ユーザー数の多さ」と「広告でのリーチの広さ」が圧倒的だったため、Spotify広告の活用を決めました。
また現在、動画メディアを活用したコミュニケーションが多く見られる中、音声メディアもチャネルの一つとして活用することで、他ブランドと差別化を図りたかったというのも決め手の一つでしたね。
三浦:ビールブランドに関しては「味覚」や「飲み心地」を伝えるコミュニケーションが多い傾向にあります。そんな中金麦では、「癒し感」や「帰宅時のほっとした感覚」といった独自性のあるキーワードを使用してブランドを表現しています。これらのキーワードは音声メディアとの親和性が高いのではないか、という仮説があったのもSpotify広告活用に至った要因でした。
MZ:具体的にはどのようなコミュニケーションを行ったのでしょうか。
林田:今回はSpotify広告を主軸にXやYouTube ショートなどのメディアも活用しました。SpotifyやYouTube ショートを通じて認知を獲得。その後Xで展開するキャンペーンを通して実際の購入へと導く、という一気通貫のコミュニケーション設計が最も理想的だと考えました。
音声広告配信の時間帯は、帰宅時間である17時から24時に限定。Spotify広告ではユーザー層のターゲティングも可能ですが、金麦はターゲット層が幅広い商材であるため、特定の層に絞ることはあえてしませんでした。
情報の“余白”を残すことが、ユーザーの創造力を掻き立てる
三浦:広告のクリエイティブは、「家で待っている金麦が帰宅してきた主人に語り掛ける設定」を軸にしました。リスナーとなる方々が自分自身の状況に重ね合わせられるように計15本の異なるクリエイティブを用意し、日替わりの設計に。音声コンテンツは「帰宅の電車の中」などルーティンで聴かれることが多いため、こうして毎日異なる場面を描くことで、シリーズ全体に対する愛着の醸成を図りました。
MZ:クリエイティブ制作時に意識した音声コンテンツならではの特徴はありますか。
三浦:あえて情報のすべてを詰め込まず、適度に“余白”を残すことを意識しました。余白があることでリスナーが想像力を働かせたり、広告内容をリスナー自身の実体験に置き換えたりすることにつながり、広告をより自分ごとにしてもらうことができます。「癒し感」や「帰宅時のほっとした感覚」は、この余白によって表現できると考えました。
林田:イヤホンでの聴取による没入感も音声コンテンツならではの強みだと思います。帰宅途中、電車内でイヤホンを装着し、Spotifyを聴きながらぼんやりする。このような状況下ではリスナーは外界と一時的に遮断され、イヤホンを通じて自分だけの世界に浸ることができます。このイヤホンでの聴取による没入感は、広告クリエイティブだとしてもその世界観により深く引き込むことができる要因の一つだと思いますね。