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広告リーチが想定対比の144%!サントリー金麦に見る、Spotifyの音声広告が高い効果を出せた理由

 ブランド認知向上の打ち手として、数多くのデジタル広告媒体が存在する昨今、一日のあらゆるモーメントでユーザーへのアプローチが可能な媒体「音声広告」に注目が集まっている。サントリー「金麦」では、Spotify上で音声広告「待ち麦物語」を展開。帰宅時間にモーメントを絞って配信を行った。その結果、Spotify平均実績対比で広告認知リフトが250%増、購買意向リフトが20%増になるなどの成果が得られたという。今回は「待ち麦物語」の企画・制作を行った電通の2人に、ブランドキャンペーンにおけるSpotify広告の有用性や活用のコツを伺った。

帰宅中の生活者にアプローチできるSpotify広告

MarkeZine編集部(以下、MZ):電通では、サントリー「金麦」のプロモーションの一環として、Spotify広告を活用した音声広告シリーズ「待ち麦物語」の展開を支援しました。貴社が今回、キャンペーンの手段として“音声”の活用を決めた理由をお聞かせください。

林田:金麦は毎日家で飲むのにふさわしいビール系飲料として多くのお客様に飲んでもらいたいと考えているブランドです。そのため、晩酌に向かう帰宅時間にユーザーがどのようなメディアと接点を生み出せているかが帰宅時間帯のコミュニケーションが施策を考える上で重要なポイントでした。

株式会社電通  第9ビジネスプランニング局 統合マーケティングプロデュース部 林田 昂平氏

 そこで、当社が帰宅時間帯の生活者による各メディアでの接触状況を調査した結果、特に高い接触率を有していたのが音声メディアでした。その音声メディア中でもSpotifyは「ユーザー数の多さ」と「広告でのリーチの広さ」が圧倒的だったため、Spotify広告の活用を決めました。

 また現在、動画メディアを活用したコミュニケーションが多く見られる中、音声メディアもチャネルの一つとして活用することで、他ブランドと差別化を図りたかったというのも決め手の一つでしたね。

三浦:ビールブランドに関しては「味覚」や「飲み心地」を伝えるコミュニケーションが多い傾向にあります。そんな中金麦では、「癒し感」や「帰宅時のほっとした感覚」といった独自性のあるキーワードを使用してブランドを表現しています。これらのキーワードは音声メディアとの親和性が高いのではないか、という仮説があったのもSpotify広告活用に至った要因でした。

株式会社電通 第1CRプランニング局 デジタル・クリエーティブ1部プランナー 三浦 慎也氏

MZ:具体的にはどのようなコミュニケーションを行ったのでしょうか。

林田:今回はSpotify広告を主軸にXやYouTube ショートなどのメディアも活用しました。SpotifyやYouTube ショートを通じて認知を獲得。その後Xで展開するキャンペーンを通して実際の購入へと導く、という一気通貫のコミュニケーション設計が最も理想的だと考えました。

 音声広告配信の時間帯は、帰宅時間である17時から24時に限定。Spotify広告ではユーザー層のターゲティングも可能ですが、金麦はターゲット層が幅広い商材であるため、特定の層に絞ることはあえてしませんでした。

情報の“余白”を残すことが、ユーザーの創造力を掻き立てる

三浦:広告のクリエイティブは、「家で待っている金麦が帰宅してきた主人に語り掛ける設定」を軸にしました。リスナーとなる方々が自分自身の状況に重ね合わせられるように計15本の異なるクリエイティブを用意し、日替わりの設計に。音声コンテンツは「帰宅の電車の中」などルーティンで聴かれることが多いため、こうして毎日異なる場面を描くことで、シリーズ全体に対する愛着の醸成を図りました

日替わりで配信された「待ち麦物語」は全15本の音声から成り、それぞれに異なるタイトルとストーリーがある

MZ:クリエイティブ制作時に意識した音声コンテンツならではの特徴はありますか。

三浦:あえて情報のすべてを詰め込まず、適度に“余白”を残すことを意識しました。余白があることでリスナーが想像力を働かせたり、広告内容をリスナー自身の実体験に置き換えたりすることにつながり、広告をより自分ごとにしてもらうことができます。「癒し感」や「帰宅時のほっとした感覚」は、この余白によって表現できると考えました。

林田:イヤホンでの聴取による没入感も音声コンテンツならではの強みだと思います。帰宅途中、電車内でイヤホンを装着し、Spotifyを聴きながらぼんやりする。このような状況下ではリスナーは外界と一時的に遮断され、イヤホンを通じて自分だけの世界に浸ることができます。このイヤホンでの聴取による没入感は、広告クリエイティブだとしてもその世界観により深く引き込むことができる要因の一つだと思いますね。

認知から購入意向まで影響力大!広告リーチが想定対比で144%

MZ:今回の施策による成果をお聞かせください。

林田:定量面での成果は次の通りでした。

  • 完全聴取数:想定対比102%
  • リーチ:想定対比144%
  • キャンペーンサイトへのクリック:想定対比231%
  • 広告認知リフト:Spotify平均対比+250%
  • 購入意向リフト:Spotify平均対比+20%

出典:マクロミルブランドリフト調査(2024年9月、過去1年の飲料クライアントの結果集計値対比)

 この中でも最も注目すべき成果は、広告認知リフトが大きく上昇したことです。一般的な動画広告の広告認知リフトと比べても非常に高い結果となりました。

 また動画広告の場合、幅広いリーチが確保できるものの広告認知率はそこまで高くならない傾向が見られます。一方、Spotify広告の場合、リーチ数は動画広告と比較するとやや少なくなるものの、広告認知率が極めて高いのが特長です。これは、帰宅時間などスクリーンを見ていないモーメントでのリーチにおいて特に強みを持つSpotifyだからこそ、コストパーブランドリフトが高いということでしょう。

 さらに、購入意向にも効果が表れています。たとえば動画広告では6秒や15秒という限られた時間で接触するだけでは、商品の購入意向を高めることが困難であると一般的に言われています。それにも関わらず今回Spotifyの音声広告では、施策実施後の購入意向の上昇がはっきりと確認できました。

 これらのことからSpotify広告による訴求は、認知から購入意向まで一貫して影響を与えられることが実証されました。

ながら聴きするのが当たり前なSpotify広告と、SNSの相性

MZ:今回実際に活用してみて感じた、Spotify広告の強みは何でしょうか。

林田:施策の開始前は、音楽の聴取中に広告が挿入されることに対して否定的な反応があるのではないかと懸念していました。しかし実際に配信を行ってみると、ユーザーからの反応は非常にポジティブなものが多く、Spotify広告の受容性が高いことが実感できました。そして、この好意的な受け止めが、さらなる波及効果を生み出したと考えています。たとえば、X上では「Spotifyで音楽を聴いていたら、好きな声優さんの声が聞こえてきた」といった投稿が多数見られました。Spotifyでの広告配信がSNS上での話題化に自然とつながっていったことは、今回のキャンペーンを通じて新たに発見できたSpotify広告の強みでした。

三浦:音声コンテンツは受け手がSNSの閲覧など他のことをしながら楽しむことも多いですよね。私たちも最初はSpotifyユーザーとSNSユーザーの層を別々に捉えており、Spotify内での体験価値の向上にのみ焦点を当てていました。しかし実際に配信を開始してみると、突然流れてきた広告についての感想がSNS上で多く共有されており、しかもSpotify独自の体験として捉えられていました。

三浦:スキップできない仕様と、ながら聴きされるからこそ生じる、予期せぬタイミングでの広告接触という「ゲリラ感」がより強い印象をユーザーに与えたと考えられるでしょう。

音だけでも動画以上に顧客との関係構築が可能

MZ:今後、クライアントの課題解決にSpotify広告をどのように活用していきたいと考えていますか。

林田:現在、YouTubeのような動画媒体においても画面を小さくして視聴するなど、映像に依存しない視聴スタイルが増えています。このような状況において、音声だけでも効果的に伝わるコンテンツの重要性はさらに高まるでしょう。今後もメディア設計とクリエイティブの両面でアップデートを重ねながら、新たな施策を展開していきたいです。

三浦:現在は動画コンテンツを使った広告配信が主流となっており、飽和状態にあります。そのため、せっかく広告配信を行っても受け手の印象に残りにくい状況であると言えるのではないでしょうか。

 そんな中で音声広告は、没入感が非常に高くユーザーのパーソナルなスペースにより深く入り込むことができるメディアです。そのため、「お邪魔させていただく」という姿勢のクリエイティブやアプローチは求められますが、それらさえしっかりと気を付けてコミュニケーションが取れれば動画以上に強い関係値を構築することにつながります。

 もちろん、リーチを補完する意味での動画広告は依然として重要ですが、今回のプロジェクトのように、音声広告を主軸に据え、動画はそれを補完する位置付けとして設計を行うというアプローチも有効なのだと感じています。

「モーメント」と「クリエイティブ」の一致がリスナーの心を捉える

Spotify担当者:今回のサントリー様の事例では、「モーメント(帰宅時)」と「クリエイティブ」の両面でリスナーの心を的確に捉えることができ、今後の音声広告の先駆的な取り組みとなったと感じています。

 今回は声優の起用がリスナーにとって違和感のない素晴らしい広告体験とつながりましたが、他にもSpotify広告では音楽の活用やアーティストの起用など、音声メディアならではの様々なアプローチが可能です。

 とはいえ、企業様の中にはこれまで音声メディアの活用に取り組んだことがなく、クリエイティブ制作に不安を感じるという方も少なくないでしょう。そんな企業様に向けて、当社ではCreativeLab(クリエイティブラボ)という組織が音声クリエイティブ制作をサポートしています。

 Spotifyでは、自社の制作スタッフが、音声素材の収録や音声起点でのクリエイティブのイメージ・スクリプト制作を支援。音声広告の作成に対する知見がない方でもSpotify広告の実施が可能です。まずはお気軽にお試しください。

 Spotify広告には、まだ開拓されていない可能性が多く存在しています。Spotifyの配信環境であればたとえばASMRのような表現手法も可能ですし、立体的な表現を用いることで、よりリアリティを持って世界観を演出できます。さらに、テレビCMの世界観の延長戦上で音声コンテンツを活用するなど、他メディアと組み合わせて相互補完させる展開も可能です。広告主の皆様と一緒に、聴き手の心を動かす革新的な広告体験を探求していけたらと思います。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:スポティファイジャパン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/20 11:30 https://markezine.jp/article/detail/47455