データや技術活用の秘訣は「顧客視点のワンチーム」
山田:企業がデジタルマーケティングにおいてデータやその技術をうまく活用するために、どのようなポイントが重要だとお考えですか?
松本:経営陣がデータ活用やIT導入に対する「危機感」を持っていると、デジタルマーケティングというテーマに関わらず先進的な取り組みも進んでいる印象を抱きます。
一方で、よくある失敗として、ありもののデータや技術といったリソースから何をするか考えてしまうケースがありますが、自社起点であるため大抵行き詰まります。そのような自社起点ではなく、お客様起点で考えることが重要です。これはAmazonでも重視している“Working Backwards”という思想と同じアプローチです。
ビジネスの目的はお客様の期待値を超え続けることです。そこから逆算してデータや技術を使う・溜める必要があります。マーケティングや広告に限らず、ビジネスを高度化するためのデータや技術活用においても、「目の前のお客様がこれに悩んでいるから」というマーケットインの考え方が重要です。
山田:そうすると、「どんなお客様の、どんな課題に向き合うのか」を判断するビジネス側のメンバーと、実際にデータ蓄積・分析を担うテクノロジー側のメンバーが目的を共有する必要がありますよね。
松本:そうですね。お互いのオーナーシップが非常に大事だと思います。たとえばマーケターが「データの話だから関係ない」、あるいはテクノロジー側のメンバーが「広告施策の話だから関係ない」と壁を作ってしまっていては、データや技術の活用はうまくいきません。
ワンチームで共通の目的を持って、ビジネスとテクノロジーのメンバーがそれぞれの視点でお客様に向き合うような、持ちつ持たれつの関係性で取り組んでいる企業がうまくいっています。
また、失敗を過度に恐れずに挑戦する企業、つまり心理的安全性の高い企業は、うまくいく傾向があります。海外の企業では、失敗しても「そこから何を学んだのか」に焦点を当てて、ポジティブに捉え、新しいものを生み出す事例が多いです。そういった体制や評価の仕組み作りも大事ですね。

ビジネスとテックが重なると新しい挑戦が生まれる
山田:ビジネスやデジタルマーケティング領域にまつわるAWSの将来像について教えてください。
松本:AWS Clean Roomsは、先述の通り広告代理店やメディア企業、調査会社といった、多様なお客様による取り組み事例が生まれています。様々な企業の皆様に、データのコラボレーションという仕組みを通じてビジネスの課題解決にご利用いただいております。
実は、クラウド技術を通じて、皆様のビジネスをより高度化できることが、このビジネスやデータでのコラボレーション以外の観点でも実現できるようになっています。そしてAWSでは、Digital Innovation ProgramというAmazon流の製品開発手法を用い、サービスデザインを支援したり、AWS Professional Servicesというコンサルティングのサービスでデジタルトランスフォーメーションを支援したりしています。「ビジネスの課題解決に伴走できるパートナーとしてのAWS」という認知を広げていければと思っています。
山田:最後に、データ活用に関心の高いマーケターの皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
松本:私自身、元々テクノロジーのバックグラウンドはなく、経営企画や事業開発がキャリアの中心にあるビジネスパーソンです。
私の経験を踏まえても、ビジネスの観点をしっかり持ったうえでテクノロジーに向き合うと、面白いアイデアがたくさん出てくるんですね。ビジネスとテックが歩み寄ったところに、新しい挑戦が生まれるはずです。なので、食わず嫌いして機会損失しないように、情報を追いながら、少しずつでもトライアルアンドエラーを重ねていくといいと思います。
