マーケティング領域におけるAWSのポテンシャル
山田: AWS Clean Roomsの理想的な活用イメージはありますか?
山田 輝明(やまだ・てるあき)氏
2009年にNRIネットコムに入社。デジタルマーケティング事業を立ち上げ、特にGoogleアナリティクス、デジタル広告に関するビジネス拡大に注力。2018年にNRIネットコムから一旦退出し、株式会社MeeCapを設立、スタートアップのCEOとして2年半業務を執行。2021年にNRIネットコム社に戻り、現在もデジタルマーケティング事業の拡大と、全社の営業・マーケティングDXを推進。
松本:まさに「データコラボレーション」を基にしたビジネスに幅広くご活用いただきたいです。
たとえば「1st Party Dataの有効活用」「データを基にしたサービタイゼーション」「ビジネス/データコラボレーション」などで想起されるビジネスには大変相性が良いです。そのため、デジタルマーケティングやアドテクノロジーの「データクリーンルーム」構築以外にも幅広く活用可能な、「アナリティクスサービス」であると考えていただくのがよいと思います。
AWSは2024年10月時点で240以上のサービスをリリースしています。その中で、AWS Clean Roomsは当初、「デジタルマーケティング」「アドテクノロジー」向けのサービスとしてリリースされましたが、最近では多様な活用が進んでいます。そのため、「ビジネスアプリケーション」「アナリティクスサービス」の位置づけに分類されるようになりました。
実際にAWSのパートナー企業様のソリューションとの連携や、Amazon Marketing Cloudとの連携が容易になるアップデートがあったりと、サービス自体の連携先も広がりを見せています。
山田:AWS Clean Rooms以外にもデジタルマーケティングの領域に活用可能なサービスはありますか?
松本:「AWS Entity Resolution」のような、IDマッチングのサービスであったり、「Amazon Redshift」のようなDWHサービスです。
私は事業開発の立場として、デジタルマーケティングに関わるソリューション開発のご相談を受ける機会が数多くあります。AWS Clean Roomsは非常に強力なデータコラボレーションのサービスなのでよくご相談いただきますが、それら周辺のサービスも組み合わせて提案することが多いです。さらに「Amazon Personalize」のようなマシーンラーニングを基にした、リコメンデーションエンジンのサービスもあります。
山田:AWS Clean Roomsについて、技術的な特徴はあるでしょうか?
松本:3つあります。1つ目は、数ステップで簡単に独自のクリーンルームを作成しデータ/ビジネスのコラボレーションが実現できる点。2つ目に、生のデータを共有する必要がなく、きめ細かな分析ルールの設定でデータの保護が実現できる点。3つ目に柔軟なSQLの設計やマシーンラーニングを活用した追加機能などで多くのビジネスニーズを満たせる点です。
また、AWS Clean Roomsの大きなメリットは、AWSをご利用いただいているお客様とのコラボレーションが容易にできることです。AWSは小売、製造、通信、ソフトウェアサービス、金融など、様々な業界に跨る数十万以上のお客様が既にいらっしゃり、また世界245の国と地域で数百万のお客様がいらっしゃいます。
つまり、皆様のビジネスパートナーや潜在的なビジネスパートナーがAWSのお客様である可能性は高く、そのお客様と容易にコラボレーションを実現できるわけです。
また、追加機能である「AWS Clean Rooms ML(※ML=マシーンラーニング)」を用いると、インサイト導出や、様々なデータに基づくセグメンテーションが簡単に可能になります。多くのマーケターは「様々なセグメントを試行錯誤して探すこと」に日々腐心していると思います。AWS Clean Rooms MLでは、直観的なユーザーインターフェースで、セグメンテーションの幅を出すことができるため、多くのお客様に興味を持っていただいております。
安全にデータのコラボレーションをするために
山田: AWS Clean Roomsを利用している企業や業界について教えてください。また、どういった効果をもたらしているのでしょうか?
松本:先述の通り、当初はデジタルマーケティングやアドテクノロジーのお客様向けにデータクリーンルームを簡単に構築し、データのコラボレーションを実現する意図でリリースしましたが、現在では様々な業界・業種に活用が広がっています。
多くの企業が、「生のデータは共有できないがデータのコラボレーションを通じてビジネスの課題解決を行いたい」というニーズを持っています。
たとえば、小売業界におけるリテールメディアサービスの構築、旅行業界のカスタマージャーニーの探索、ヘルスケア業界のペイシェントジャーニー(患者が医療サービスを受けることで経験するあらゆるプロセス)の可視化などです。同業他社や取引先とデータの連携を行うことで、目の前のサービスをより高度化したり、目の前のお客様の課題を解決したりできるのです。
山田:お客様からは、AWS Clean Roomsのどんな点を評価されているのでしょうか?
松本:数多く寄せられる質問に、データのコラボレーションを行いたいが、セキュリティのリスクの高さを担保できる仕組みや外部と容易に連携できる仕組みがないといった内容があります。そのため、先述の技術的側面の3点と、AWSを導入している多くのお客様との連携が可能な点でメリットを感じるお客様が多いようです。
お客様の中には、従来から生のデータを外部と共有しあう仕組みを自社に構築されていたケースや、企業同士で同じ個社のCustomer Data Platform(CDP)を活用することでデータ連携を実現していた、というケースがあります。しかし、前者はデータセキュリティの観点でリスクが非常に高く、後者でも様々なCDPサービスがある中で同じサービス同士でなければデータ連携がしづらく、連携先の幅が広げられない課題を聞きます。
AWS Clean Roomsは生のデータを共有することなく、国内数十万以上のお客様との連携が容易になり、かつそれが数クリックで非常に安価に実現できるのです。
山田:データ連携のニーズはあるものの、セキュリティや技術的観点で独自の仕組みを構築することは難しい。導入支援の現場でよく耳にします。多くの企業で共通に活用されているクラウドであるAWS上でデータ分析ができる点は大きな特徴ですね。
松本:そうですね。最近のマーケティング手法では、顧客像をより立体的に捉えるために、SNSや、EC、コールセンターといった様々なチャネルのデータを集めて分析するCustomer 360という概念が当たり前になりつつあります。AWS Clean Roomsでは、それらのデータ連携を実現できるため、顧客像の立体化が容易に可能となります。
