AIを駆使したクリエイティブを、右脳と左脳で判断する
一方、広告クリエイティブの領域も、生成AIの進化により大きく変化しています。当面は生成AIをうまく使いこなせるか否かで、勝敗が決まると考えてください。
生成AIの登場で、コピーライターやアートディレクターといった職種の垣根は壊れてきています。生成AI自身は、クリエイティブを「コピーを書く」「絵を描く」「映像を作る」といった作業に区分していません。なので、そういう発想でAIを使ってもダメなのです。「広告=キービジュアルとコピー」という形式にさえ、とらわれる必要はありません。CMの提案をする際、絵コンテを描いてプレゼンする必要もありません。
従来のクリエイティブ制作を振り返ってみると、データや言葉を扱う「左脳派」と、ひらめきと職人芸の「右脳派」に分かれて広告クリエイティブが作られていました。
しかし本来は右脳と左脳を往還して、クリエイティブを設計するのがよいと考えています。感覚的に作ったビジュアルを数値的に分析することや、逆にデータや言語からビジュアルに落とし込むことが、効果的な広告クリエイティブにつながるはずです。私は以前からこのやり方を提唱してきましたが、なかなか実践が難しかった。
というのも、データを扱って広告のクリック率を上げようと考えている左脳派の人たちは、クリエイティブまで落とし込めない。一方の職人肌である右脳派の人たちも、自分のセンスの引き出しにあるものだけでやりたがるので、データの入る余地がなかったのです。
ところが今、生成AIの登場でこの「右脳と左脳の往還」の一部を任せられるようになりました。つまり、人間が自分でデータからビジュアルを生み出すことは難しくても、生成AIにデータを投げて、出てきたビジュアルを判断すればよいのです。
ですので、これまでのクリエイティブ組織から脱却して、この「右脳と左脳の往還」を意識しながら、生成AIを使いこなせる人材でチームを作ることが、これからの広告エージェンシーのクリエイティブ戦略になると思います。非クリエイターでも、生成AIを味方につけることで、クリエイティブ領域で活躍できる人材になるでしょう。
以前、「AIの登場によって広告運用が自動化されるので、そこを担ってきたマーケターは別の能力を磨くリスキリングが必要」といった話をしたことがあります。その選択肢の一つに、生成AIを駆使したクリエイティブの制作もあります。AIを味方にして活躍するマーケター、クリエイターが今後もっと登場するのではないかと期待しています。
