※本記事は、2025年1月刊行の『MarkeZine』(雑誌)109号に掲載したものです
【新年特集】2024→2025 キーパーソンによる予測と展望
─ 【業界人間ベム】2025年・広告マーケティング業界7つの予測
─ 【B2B Marketing Hack】2025年・BtoBマーケティング業界4つの予測
─ 政治力を失ったGoogle vs 司法省――2025年以降の10年で新旧市場を巡り起こること
─ マーケティングは企業の競争力に直結する。入山章栄氏が考える、マーケ力向上の3点セット
─ 加速する「情報のカオス化」と「個人の時代」へのパラダイムシフト 西口一希氏がAI時代に見据えるもの
─ 2025年、広告エージェンシーに求められるのは「営業」の再構築/AIを味方に戦略の転換を(本記事)
─ 2025年は「マーケティングの本質」に立ち戻る―AI時代こそ見直される「人」の価値―
─ ビジネスの成長にはEX向上が不可欠に――みずほの挑戦から学ぶ
─ もはや「トレンド」の概念すらなくなる?Z世代の企画屋今瀧健登氏による2025年の変化予測
─ 注目ブランドは2025年どう動く?【アサヒ/味の素冷凍食品/アドビ編】
─ 注目ブランドは2025年どう動く?【江崎グリコ/SMBC日興証券/花王編】
─ 注目ブランドは2025年どう動く?【資生堂/日産自動車/パナソニック編】
─ 注目ブランドは2025年どう動く?【パル/Bリーグ/有楽製菓編】
─ 事業成果の徹底的な可視化を電通が注力するデータ戦略事業「Marketing For Growth」
─ 広告会社からクリエイティビティ・プラットフォームへ 博報堂DYグループの展望とそれを支えるAI活用
─ IPビジネスで培ったノウハウで自社の強みを尖らせていくADKのファングロース戦略
─ AI領域で好走するサイバーエージェント、2025年はインターネット領域で独自サービスの確立を目指す
─ グループ再編を経て、主戦場を拡張するオプト 注力する「LTVマーケティング」でのビジョン
─ DXにより「移動価値」を高め、駅商圏のリテールメディア構築を目指すJR東日本グループの中長期戦略
─ 生成型AI「Grok」の搭載と縦型動画の強化 進化するXの今
─ 「ショート動画」ブームはさらに加速 2025年、TikTokがクリエイター/広告主向けに仕掛けること
─ 検索エンジン「Bing」×AIアシスタント「Copilot」で実現する、“パーソナルな検索体験”
─ 変革をリードするMetaのAI ユーザー体験の進化、実用化する広告活用の現在地
─ LINE×ヤフーのデータ連携、横断サービスの展開を強化 「Connect One構想」の現在地
─ BtoBマーケで加速する「つながり」の重要性 「LinkedIn」でソートリーダーシップをどう築くか
広告エージェンシーに求められる「営業」の再構築
2025年、広告エージェンシーにとって最大のテーマは「営業」となるでしょう。広告エージェンシーに求められる役割が変化していく中で、「広告会社の営業とは何か?」を改めて考え直さなければならない時が来ています。つまり、広告枠を売るだけでは生き残れなくなってきた時代に、何をどのように扱うのかが問われているのです。

1982年旭通信社(現ADK)入社。1996年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)を起案設立。同社代表取 締役副社長に就任。2008年ADK インタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。2011年7月デジタルインテリジェ ンス代表取締役に就任。2022年7月よりトレンダーズ社外取締役。著書に『広告ビジネス次の10年』『2030年の広告ビジネ ス』(翔泳社)などがある。
電通は以前からフロント営業のことを「ビジネスプロデューサー」と呼んでいて、これには先見の明があったと言えます。私は、これからの広告会社の営業パーソンには、提案の中身ではなく「ビジネスをどう作るか」で勝負していくことが求められると考えています。
2025年以降、広告会社とコンサルティング会社の領域はますますオーバーラップしていくはずです。営業パーソンはアカウントコンサルタントの概念を導入し、自分たちの利益をコーディネートする必要があります。「うちは〇〇専門の代理店だから」と線を引かずに、何を売るかまで営業が提案してよいのです。そこには、平場での情報収集や顧客との関係構築も必要になってくるでしょう。
たとえば、大きな提案をする際に顧客のオリエンどおりに作るのは愚の骨頂。誰が決裁者で、競合他社はどこで、何番目にプレゼンテーションするのか……といった提案内容の「周辺」を固めておくことが大事です。顧客に交渉して望ましいプレゼンの順番を引いてくることも、営業の一つの役割。そのために、日ごろからお客様と対話し、情報の引き出しを持っておくのです。
フロントである営業パーソンが「新しいビジネス」を開拓できるか
今後の広告エージェンシーにおいて、こうしたフロントの動きが鍵となる背景には、生成AIの台頭があります。バックエンド側のクリエイティブは生成AIでいくらでも生み出せるようになる。その一方で、お客様とインターフェイスするフロント業務というのは、AIに簡単に取って代わられることはないでしょう。逆に言えば、フロントの強さこそが勝負の決め手となり得るわけです。
営業が提案を振り返るレビューをする際には、提案内容の振り返りに充てる時間は2割だと考えてください。そこに向けて顧客の誰と接触したか、どういう情報を得たかといった「提案の周辺」の振り返りに8割を割くべきです。
提案の中身はなんでもアリの時代です。広告だけでなく、ITシステムや「仕組み」を売ることも考えられます。売りもの自体が広がっていくからこそ、それを採用してもらうための営業の知恵や素質が、今後はより一層問われるのです。
フロントである営業パーソンが新しいビジネスを開拓できるか、提案の方向性をリードできるかが、これからの広告エージェンシーの勝ち筋になるでしょう。