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情報と知識のカオス化が加速した2024年
2024年を振り返って、大きな変化は「情報と知識のカオス化」が顕著になってきたことだと思います。
この20年における情報流通の歴史では、マスメディアとインターネットがその影響力をめぐってせめぎ合ってきました。ところが、2024年の米国と日本での様々な選挙をめぐる動きを見ればわかるとおり、インターネットの影響力が明らかに上回り始めています。
また、生成AIの登場で情報獲得はさらに便利になりました。勉強会やセミナーに行かずとも、知識や情報はいくらでも簡単に手に入ります。
情報の取得に関して生成AIを活用する機会はますます増えていきますが、生成AIは実際には存在しない情報を生み出すハルシネーションの問題が避けられません。また、そもそも生成AIが基にするインターネット上の情報に含まれる間違いや嘘がますます増加している状態は大きな問題です。
生成AIが広がって便利になっても、正しい情報と誤った情報を、個々人が見極めることがより重要になります。これまでは、そこそこ正しそうな情報と知識をマスメディアから得て、社会や経済状況をある程度把握することができましたが、これからの情報の選択はより個人に委ねられるようになります。ある意味、個々人が対峙する「情報と知識はカオス化」すると言えます。
マーケターを取り巻く環境も同様です。2024年時点で、英語で検索するとマーケティングに関連する用語はデジタルや技術用語を含めて5,000語程度、マーケティングの業務ツールは1万を超えています。もはやどんなに優秀でも、これらすべてを個人が把握するのは不可能なレベルにまで増えていて、これからも減る気配はありません。さらに、ここに生成AIのハルシネーション問題が加わります。
こうした「カオス化」の中で、個人が情報と知識に選択責任を持つことは果たしてネガティブなことでしょうか。私はこの変化を「個人の時代」への大きなパラダイムシフトの入り口だと捉えて、短期的なカオスを経て、長期ではよい時代に向かっていくと期待しています。