【新年特集】2024→2025 キーパーソンによる予測と展望
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─ 広告会社からクリエイティビティ・プラットフォームへ 博報堂DYグループの展望とそれを支えるAI活用
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─ グループ再編を経て、主戦場を拡張するオプト 注力する「LTVマーケティング」でのビジョン
─ DXにより「移動価値」を高め、駅商圏のリテールメディア構築を目指すJR東日本グループの中長期戦略
─ 生成型AI「Grok」の搭載と縦型動画の強化 進化するXの今
─ 「ショート動画」ブームはさらに加速 2025年、TikTokがクリエイター/広告主向けに仕掛けること
─ 検索エンジン「Bing」×AIアシスタント「Copilot」で実現する、“パーソナルな検索体験”
─ 変革をリードするMetaのAI ユーザー体験の進化、実用化する広告活用の現在地
─ LINE×ヤフーのデータ連携、横断サービスの展開を強化 「Connect One構想」の現在地
─ BtoBマーケで加速する「つながり」の重要性 「LinkedIn」でソートリーダーシップをどう築くか
情報と知識のカオス化が加速した2024年
2024年を振り返って、大きな変化は「情報と知識のカオス化」が顕著になってきたことだと思います。

大阪大学経済学部卒業、P&G ジャパン、 ロート製薬、ロクシタン、スマートニュー スのマーケティング統括・代表取締役など を歴任。2020年にM-Force を創業、2024 年にマクロミル社に売却。現在、Strategy PartnersおよびWisdom Evolution Company 代表取締役社長。
この20年における情報流通の歴史では、マスメディアとインターネットがその影響力をめぐってせめぎ合ってきました。ところが、2024年の米国と日本での様々な選挙をめぐる動きを見ればわかるとおり、インターネットの影響力が明らかに上回り始めています。
また、生成AIの登場で情報獲得はさらに便利になりました。勉強会やセミナーに行かずとも、知識や情報はいくらでも簡単に手に入ります。
情報の取得に関して生成AIを活用する機会はますます増えていきますが、生成AIは実際には存在しない情報を生み出すハルシネーションの問題が避けられません。また、そもそも生成AIが基にするインターネット上の情報に含まれる間違いや嘘がますます増加している状態は大きな問題です。
生成AIが広がって便利になっても、正しい情報と誤った情報を、個々人が見極めることがより重要になります。これまでは、そこそこ正しそうな情報と知識をマスメディアから得て、社会や経済状況をある程度把握することができましたが、これからの情報の選択はより個人に委ねられるようになります。ある意味、個々人が対峙する「情報と知識はカオス化」すると言えます。
マーケターを取り巻く環境も同様です。2024年時点で、英語で検索するとマーケティングに関連する用語はデジタルや技術用語を含めて5,000語程度、マーケティングの業務ツールは1万を超えています。もはやどんなに優秀でも、これらすべてを個人が把握するのは不可能なレベルにまで増えていて、これからも減る気配はありません。さらに、ここに生成AIのハルシネーション問題が加わります。
こうした「カオス化」の中で、個人が情報と知識に選択責任を持つことは果たしてネガティブなことでしょうか。私はこの変化を「個人の時代」への大きなパラダイムシフトの入り口だと捉えて、短期的なカオスを経て、長期ではよい時代に向かっていくと期待しています。