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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

人起点の顧客関係構築を考える

観戦の熱を保ち続けるには?無料招待やIPコラボは熱狂につながる?Jリーグが語るCRMとブランド戦略

新規ファンの熱量と的確な言語化が既存ファン・サポーターの心を打つ、IPコラボ

――IPコラボによる「好き」の相乗効果は生まれていますか?

竹渕:確実に生まれています。コラボをきっかけにクラブのコアサポーターになるなど、スタジアムに継続的に来てくれる方も増えています。その方々が応援するクラブについて高い熱量でSNSやnoteに投稿してくださっています。

竹渕さんの画像です

 ファンベースの掛け合わせは、お互いの距離が近すぎると熱量は高くなりますが新たなお客様の増加に派生しません。反対に、遠すぎると両者の親和性がなく一過性で終わってしまいます。ですからJリーグとコラボ先との良い距離感の掛け算を、何度もトライして模索しています。

鈴木:未利用者層に届けるところに注力しすぎると、コアファンへのアクションが崩れます。ですからきちんとコアファンが熱狂するコンテンツも未利用者層とは時期をわけて提供しています。たとえば開幕期は完全にコアファンに向けたコンテンツを発信しています。「さあ、今年も始まる!」とファンが盛り上がり、高まった熱量を開幕につなげます。

 たとえば開幕の煽り動画。煽り動画制作のプロとタッグを組み、非常に熱量の高い内容にしました。2025シーズンの開幕煽り動画は113万回再生を超えています。完全視聴の男女比は五分五分でした。Jリーグのファン・サポーターは基本的に男性が約6~7割と多いので、このフォーマットが女性にもウケたことは意外でしたね。

 また、SNSではコアファンにきちんと届けることで、他の方々にも広がります。波及効果を意識して、2025シーズン開幕期には既存サポーターに向けたラブレターとして「Jリーグのある日常」を制作しました。

「Jリーグのある日常」と煽り動画の画像です
画像左:「Jリーグのある日常」(Xの投稿より)、画像右:「【煽り映像】友よ、勝者は俺だ | 2025明治安田Jリーグ開幕」(YouTubeより)

世界から選ばれるJリーグへ

――最後に、今後のJリーグについてお2人のビジョンや思いを聞かせてください。

鈴木:Jリーグは、2026年のシーズン移行を控え、これから変革の時を迎えています。これからは、「地域密着型」や「誰もが安心安全に観戦できる」などの今ある良さは変えずに、様々な価値を上乗せしていきます。

 Jリーグがもともと持ち合わせている良さに加えて、フットボール水準の向上、総合エンターテインメントとしての価値向上という3軸で、新しいJリーグを世の中に打ち出していきます。

竹渕:コミュニケーション戦略としては、来年新シーズンに向けて、プロモーションやデザイン、様々なコラボレーション企画をさらに盛り上がるように進めていく予定です。全世界の人たちが「来たい」「観たい」と思う、さらに魅力的なリーグになれるように尽力していきます。

編集後記(飯髙悠太)

 今回は国民的スポーツであるJリーグ(サッカー)の執行役員・事業マーケティング本部長の鈴木さんとマーケティング部長の竹渕さんに話を伺った。

 Jリーグは2017年頃からCRM基盤の構築に着手し、JリーグIDによる顧客データの収集と活用を行うなど、先進的な取り組みを実施してきた。そこからさらに新規のファン・サポーターを増やすために統合マーケティングを実施。コロナ禍が開ける頃から、年間で数十万人単位で新規のJリーグIDと新規スタジアム来場者を獲得してきた。結果、顕在化したのが「新規ファンのアクティブ化・再来場」に対する課題だと語る。

 CRM体制を整え40クラブのナーチャリング施策をリーグが担当するとともに、ローカル強化戦略を展開。関心の向上を行い、そこから集客につなげる「フラグシップ試合」を開催し、多くの新規来場を実現している。それだけでなく、無料招待のリピート率は脅威の4割超、有料転換は3割。マーケティングに関わっている方であれば、この数字がどれだけすごいかは容易にご理解いただけるだろう。

 個人的には招待施策の効果はどうなんだろう?という疑問もあったが、スタジアムでの体験が重要であり、その一番のハードルである初来場という課題をこの施策によって解決している。さらに来場したお客様は試合だけでなく会場の雰囲気やイベントなどを含め楽しむため、そこに関しても定量的に評価をし改善をしている。表現するとシンプルだが、実現は簡単なことではないと感じた。

 また、ファン・サポーターの熱量ベースでアプローチ方法を変え、顧客の体験を提供することで、次のステップへとつなげている。IPコラボもそうだが、サッカーという枠だけ捉われない施策は素晴らしいし、結果としてそこからコアファンも生まれている。

 今回の取材を通して、Jリーグはクラブを支えることを前提に“どう体験を作るか”を追求していると感じた。日本だけでなく全世界のサッカーファンが注目するリーグになることを期待したい。

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/23 16:13 https://markezine.jp/article/detail/48271

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