ヒットした動画シリーズ、誕生のヒントは社内から
━━先ほど人気のショート動画をご紹介いただきましたが、他に反響の大きかったコンテンツやシリーズ物はありますか?
稲葉:先ほどお伝えした「お皿の行方」の誕生のきっかけになったシリーズがあります。それが「おうちで社会見学」というもので、普段お客様から見えないくら寿司の裏側で動いているシステムや工夫を紹介する動画です。
稲葉:当時はコロナ禍で外出自粛が叫ばれていた頃でしたので、「こんな内容なら見ていただけるかも」と考えました。テレビ番組でも「お店の裏側紹介」は人気ですし、実際期待どおりに大きな反響がありました。
小坂:きっかけは、メディア対応を主業務とする広報部のマネージャーがくれたアイデアです。おかげさまで、くら寿司はテレビのバラエティ番組で取り上げていただく機会が多いのですが、特に普段見えない厨房の裏側を扱ったものは大人気なので、我々も「視聴者の方々によりおもしろく見ていただけるように」と頑張っています。その経験から発案されたのが「おうちで社会見学」シリーズだったんです。
━━担当領域の垣根を越えて、アイデアを共有されているのですね。
“バズるクリエイティブ制作”に向けて注意していること
━━動画を制作する際に心がけていること、留意していることがあれば教えてください。
小坂:YouTube施策全体の管理者として、動画を出す前に私が最終チェックしていますが、その際に留意している点は2つあります。
第1に、コンテンツ全体の雰囲気やコンセプトが一貫しているかどうか。いわゆるトンマナ(トーン&マナー)の確認です。
第2に、視聴する方が不快に思わないか。視聴する方のなかにはお客様もいらっしゃいますし、商品を一所懸命仕入れているバイヤーも、商品を作っている従業員もいます。そうした方々全員が不快に思うことのないように、映像やナレーション、コメントなどすべてにおいてチェックしています。時には、複数の方にチェックをお願いし、世に出す動画として問題がないか入念にチェックしています。
稲葉:誰も傷付けることがないように、小坂が念入りにチェックしているのは私にとっても安心ですし、トンマナについても相談できる環境があるのは、YouTubeで公開する上で非常にありがたいですね。

稲葉:私が制作時に留意していることは、商品を見せる角度など、美味しそうな見た目を最大限に活かす見せ方にすること、同時にマニュアルに沿って作った商品であることです。仮に動画の時だけ商品そのものを“盛って”しまった場合、それを見た視聴者の方がお店に行き、出てきた商品が動画と違っていたらがっかりしてしまうでしょう。お店にも迷惑をかけてしまうことになるので、調理のマニュアルに則った商品作りは意識しています。他にはオープニングもマンネリにならないように印象付けることや、食べる時のリアクションもわかりやすいように毎回工夫していますね。
━━月2回のフェアの告知や他社ブランドのタイアップ企画など、お店・商品を訴求する際に注意していることはありますか。
小坂:フェアや企画の告知では、配信タイミングが遅くならないように注意しています。フェアの実施期間は2週間ですから、動画配信がスタートから1週間後では遅すぎます。寿司チェーンですし、「企画ネタの鮮度」は大事にしています。
稲葉:私がこだわっていることは、メイン商品以外の隠れた商品にもスポットライトを当てることです。たとえばカニフェアの場合、カニがメインなのでチラシの写真はカニのお寿司を目立たせましたが、同じフェアでは「宮崎牛てんこもり」という肉寿司も展開されていました。こちらも商品開発が心を込めて作った商品ですし、味も絶品です。メイン以外にもそうした推し商品の美味しさを動画で伝えれば、お客様も「そういう商品もあるんだ」とより楽しめると思って制作しています。
