複雑な手続き不要!従来の常識を覆すNFTウォレット「Cocollet」
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、博報堂プロダクツが展開するNFTウォレット「Cocollet」について、概要・特徴を教えてください。
西澤:「Cocollet」をリリースしたのはNFTブームに沸いていた2023年。NFTの新しいプロモーション活用方法を模索する中で生まれました。
「Cocollet」の特徴は、マス向けのプロモーションに特化している点です。利用者はメールアドレスを登録するだけで簡単にNFTを取得することができます。壁紙のダウンロードと同じような手軽さで、特別感のあるデジタルノベルティをより楽しめるようになっています。

MZ:「Cocollet」を活用した代表的なプロモーション事例について教えてください。
西澤:映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のプロモーションでは、来場者に二次元コードが印刷されたカードを配布し、そこからNFTを取得できる来場記念キャンペーンを実施しました。特徴的なのは、2種類の上映方式に合わせて異なるNFTを用意した点です。通常版と特殊フォーマット版それぞれの上映方式の鑑賞により異なるデザインのNFTが取得でき、さらに両方の上映を視聴した方には、特別なレアNFTを提供するようにしました。トランスフォーマーシリーズは、熱心なコアファンがいる作品です。NFTの特別感を活用することで、一度の観賞で終わらせるのではなく、異なる上映方式で複数回楽しんでいただくことを目指しました。

西澤:結果として、NFTの累計配布数が2万9千個を突破。これは国内のNFTプロモーションとしては非常に大きな規模です。特筆すべきは、多くのファンが全種類のNFTコレクションを完成させる「コンプリート」を達成したことです。さらにSNSでも盛り上がりを見せました。ファンの間で「このNFTをゲットした!」といった投稿が共有され、自然とコミュニティが形成されていきました。
NFT×プロモーション活用のメリットと課題
MZ:従来のデジタルノベルティと比べて、NFTをノベルティとして活用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
伊藤:たとえば、従来のデジタルノベルティの代表例である「ポイント」は、汎用性が高く応募数を獲得できる一方で、懸賞マニアの参加が多くなり、ファン化につながりにくいという課題がありました。また「壁紙ダウンロード」は、商品購入者との紐付けが難しく、簡単に複製して拡散されてしまうという問題もありました。これに対して、高い耐改ざん性をもつブロックチェーン技術と購入証明書の役割を果たせるNFTの特性により、不正なダウンロードの防止も、購入者との紐付けも可能になります。
また、物理的なノベルティは配布して終わりになりがちですが、NFTの場合は匿名化された所有者の情報であるウォレットアドレスを取得できるため、継続的な顧客とのコミュニケーションができます。
そして、「Cocollet」は、それらのNFTの特性を最大限に活用した新たな体験設計と、クライアントの商品やサービスを訴求する柔軟な企画設計が可能で、ユーザーの体験と結びついた“記憶に残るプロモーション”を実現できます。

MZ:NFTをノベルティとして活用することにはメリットが多い一方で、課題もあったそうですね。どのような課題があったのでしょうか?
西澤:まず、NFTそのものに対する生活者の理解が曖昧で、取得後の活用方法がわからないという声が目立ちました。確かに、当初の「Cocollet」は配布のしやすさに重点を置いており、配布後の活用方法や、NFTならではの価値をどう創出するかという点をさらに進化させる必要がありました。プロモーションの本質は、ユーザーの心を動かし、行動を促すことにあります。NFTを活用する際も、ユーザーの心に響くような企画設計が不可欠だということが明確になりました。
そこで、物理的な特典と同じように喜んでいただけるサービスとするために、NFTの所有に意味のある価値をどう付与するか、協議を重ね、4つの新機能を追加することにしました。
ユーザー体験がさらに充実!4つの新機能
西澤:1つ目の機能は、「くじ機能」です。どのNFTが当たるかわからないという要素を加えることで、取得過程自体をエンターテインメント化することを目指しました。
2つ目は「NFTの合成機能」です。これはトランスフォーマーの事例でも活用された機能で、指定の組み合わせのNFTをコンプリートすることで新しい種類のNFTが獲得できる仕組みです。特典の入手を目指し、複数のNFTを集める意欲を促進します。
3つ目は「ユーザー間の譲渡・交換機能」です。ユーザー間でNFTの譲渡や交換が可能になりました。メールアドレスさえ知っていれば、リアルの友人関係に限らず誰とでも自由に、SNSやファンコミュニティを通じてデジタル上でNFTを交換できる仕組みとなっています。SNS等で交換する相手を募る、入手したNFTを見せ合うなど、ユーザー同士の交流を促進します。そして、自分だけでNFTを集めるのではなく、仲間と一緒に集め、コンプリートを目指すといったように、まさに集めるという行為に、自己満足以上の新たな価値を持たせることができます。
4つ目は「スマートフォンのウィジェット設定機能」です。お気に入りのNFTをスマートフォンのウィジェット(待ち受け画面)に設定できるようになりました。ユーザーはコレクションしたNFTをスマートフォン上でいつでも閲覧できます。またNFTを他人に譲渡すると自分のウィジェット表示も消失する仕組みで、デジタルデータの「所有」という概念をより実感しやすくなっています。

子どもからシニアまで!幅広い世代が楽しめる
MZ:「Cocollet」の新機能を活用した取り組み事例とその成果について教えてください。
西澤:NHKで放送されていた子ども向け番組「オトッペ」のエンディングテーマ3曲「OH!OH!オトッペ」「バラバラバンバ」「ミーチャッタ・ダンス」のジャケット画像をNFT化し、3種すべてを入手された先着100名の方には、オープニングテーマ「ウキウキオトッペ」のジャケット画像のNFTもプレゼントするキャンペーンをしました。
NFTが特定のファン層だけでなく、子どもを含めた幅広い層に受け入れられ、簡単に利用できるものであることを証明できたと思います。


【OH!OH!オトッペ】【バラバラバンバ】【ミーチャッタ・ダンス】
伊藤:注目すべき点は、50%以上の参加者がコンプリートしたことです。一般的なキャンペーンでは、参加者の多くが途中で離脱する傾向が見られますが、「Cocollet」を使って楽しみながら集められる体験設計が効果的に機能したことを示唆しているでしょう。
西澤:また、法華宗総本山 本成寺の節分の伝統行事である「鬼踊り」に合わせて、デジタル御朱印ラリーの取り組みも行いました。これまでは例年、屋台や鬼踊りの舞台などの一部のエリアのみに来場者が集中してしまっていました。そこで、楽しみながら境内全体を歩く体験を通じて、本成寺の魅力を万遍なく伝えられる企画となるように考えました。
具体的には、境内の5ヵ所に二次元コードを掲載した鬼のパネルを設置し、各所でデジタル御朱印(NFT)を取得できる仕組みを作りました。さらに、5種類すべてを集めた先着100名にはスペシャルNFTを配布し、そのNFTと引き換えに実物の御朱印帳がもらえるという特典も用意しました。

伊藤:開始時刻の午前10時の前から早くも人が集まり、「御朱印ラリーのために来ました」という方もいらっしゃるほど、大きな盛り上がりを見せました。実は当初は、地方の比較的シニア層の多いお寺で行うことについて、NFTを取得する体験はハードルが高すぎて難しいのではないか、という懸念の声もありました。ですが、実際には若い方からお年寄りまで多くの方々が参加して、楽しみながら境内を巡っていました。コンプリート特典も夕方の終了時刻を待たずに、お昼過ぎには配布終了となるほど好評でした。この事例は、NFTの活用可能性が幅広い層や場面に広がっていることを示しているでしょう。

また、本イベントでは、当日の現地でのデジタル御朱印の配布に加えて、事前にSNSの告知投稿で二次元コードを拡散し、1種類のデジタル御朱印は先行して取得できるようにしました。これによりイベントの開催前から参加者との接点を作り、イベントへの期待感を高めることを通じて、現地への来場を促すことができました。
ロイヤル顧客育成やサステナビリティへの貢献も
MZ:そのほか、「Cocollet」はどのような活用方法が考えられるでしょうか? 特徴を踏まえ、考えられる活用ケースについて教えてください。
西澤:まず、OMO施策としての活用です。本成寺の事例で実証されたように、二次元コードによる即時取得とその場でのコンプリート特典の提供という特長を活かし、オンラインとオフラインを効果的に連携させることができます。
そして、新しい形のデジタルノベルティとしての展開も考えられます。従来のデジタルポイントなどと比べると、クライアントの独自性や魅力を表現しやすい特徴があります。たとえば、IPを使ったコレクション性の高い展開や、ロイヤル顧客育成のためのマイレージプログラムのような活用もあるでしょう。

西澤:またサステナビリティの観点からも「Cocollet」の活用は意義があると思います。従来の物理的なノベルティを大量に使った大規模なプロモーションは、ノベルティの生産と配布における環境負荷が課題となっています。デジタルノベルティは、こうした課題に対する一つの解決策を提供し、環境負荷を低減しつつも、時代に即した魅力的かつ効果的なプロモーションを可能にする手段ではないでしょうか。NFTを活用することで、環境に配慮しつつ、より多くの人々に楽しんでいただくプロモーションを展開できる可能性が広がっています。
生活者体験を中心に 進化し続ける「Cocollet」
MZ:最後に、今後のアップデートの方向性や展望、MarkeZine読者へのメッセージをお願いします。
伊藤:まず短期的には、生活者の体験価値の向上を中心に据えた機能の実装に注力し、本日ご紹介したような具体的な事例を伴った成果を、たくさんのキャンペーンにおいて積み重ねていくことを目指していきます。
そして中長期的には、博報堂DYグループが提唱する「生活者インターフェース」へと進化させていくべく、「Cocollet」を通じて得られた生活者データを活用して、より深い生活者理解に基づくマーケティング施策を実現するサービスへと発展させていきたいと考えています。

西澤:トレンドとは時代とともに常に変化していくものです。その点「Cocollet」は、より本質的な生活者の「体験価値」に重点を置いているため、変化に柔軟に対応できます。そのため、新しいトレンドが生まれた際には、それに合わせてサービスをアップデートしていくことが可能です。
このような継続的な進化を実現するためには、企画面と技術面の連携が不可欠です。今後も博報堂DYグループの総合力を活かして、プロデューサー、プランナー、エンジニアが一体となったチームで、それぞれが持つ様々な知見を組み合わせながら、時代に即したサービスへと進化させ続けていきたいと思います。
Cocolletに関するお問い合わせはこちらから
詳しい機能のご紹介やデモンストレーションの実施など博報堂プロダクツのお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。