集めた声をどう施策に落とし込む?「マジボイス実現委員会」の取り組み
続いては、具体的な声の活用について紹介がなされた。商品の改善に向けて、同社では「マジボイス実現委員会」を立ち上げている。委員会の担当者が顧客の声をキャッチし、顧客と商品開発担当者、店舗のハブとなることで改善につなげる組織だ。

委員会では毎月ビミョー評価が多い商品を5アイテムほど選び、顧客の声を分析したレポートを並べて、改善方法について議論を重ねる。議論の様子や改善結果はサイト上やSNSで公開している他、マジボイス内でもリアルタイムで報告しており、さらに店内のポップなどでも掲載している。
宮本氏は特に反響が大きかった事例として、ビミョー率が高く改善を望むコメントが多かった「無添加からだ想いラップ」という商品の改善施策を挙げた。同商品は「パッケージがすぐ使えなくなる」「切りにくい」などの声が多く、顧客の声をもとに箱を頑丈にして切りやすい形にリニューアルした。
またリニューアル後に、改善に活かすことができたお礼として声を投稿した顧客に事前告知なしで新商品が試せる無料クーポンを配布した。クーポンをきっかけに新商品を手に取る顧客も多く、「新商品が使えて嬉しかった」「本当に切りやすくなった」「箱が頑丈になった」などポジティブな声が一層自発的に上がった。

宮本氏は「企業からの一方通行の発信だとノイズが入ってしまいます。マジボイスに投稿して改善されると無料クーポンがもらえるという心理が働いた結果、より声が集まりやすくなり、さらに改善結果を実感いただいたことで企業としても信頼度が上がったと考えています」と振り返った。
ネガティブな声も真摯に受け止める姿勢がファンを生む
宮本氏は、施策が絵に描いた餅にならないよう社内での活動の浸透やインナーモチベーションの向上が非常に重要だと指摘。マジボイスの立ち上げ当初は、すべての口コミを公開するのは商品のネガティブキャンペーンになり、売り上げが下がることを危惧する意見も社内で出たという。
しかし、顧客最優先主義という企業理念に立ち返るとネガティブなコメントも含めた顧客の声を真摯に受け止め対応することによって、短期的には利益が損なわれても長期的には大きな利益を生むことを伝えていった。人口減少の時代、企業にとって顧客なしでは事業の発展はありえない。顧客の数が減ってしまう時カギとなるのは、LTVの向上だ。
宮本氏は「お客様をファンにしていくことは非常に大変です。企業の一方通行の情報発信が届きづらい中、顧客の声に真摯に受け止めて対応し、ニーズにあった商品を作る。そういった企業姿勢を伝え、信頼度を上げてファンになっていただくことが重要だと考えています」と語り、講演を締めくくった。
