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花王が広げる「職場のロリエ」への共感、メーカーとして“働きづらさ”にどう向き合ったのか

女性の“働きづらさ”に、メーカーとしてできること

 西本氏は「自社が過去に発信してきたものを見直し、異なるメッセージに変えるのは難しい」と指摘。「変えなくてはならない」と判断したきっかけについて質問した。

 手島氏は、入社1~3年目の社員に対する社内アンケートがきっかけになったと説明。社会人になったばかりの若手社員はスケジュールも自分主導で組めず、“弱い立場”であることから、そういった人たちの声を拾うことを重視してアンケートを実施したという。

 その結果、仕事中に「突然生理が来たけど、生理用品がない」ことに苦労したという声が寄せられ、生理中に働きにくい環境であることが困りごととして見えてきた。

 その後、全国の20~30代の働く女性500人にも調査を実施。そこでは「生理中でも普段通りに過ごしたいのに現実はできていない」というギャップが浮き彫りになった。普段のコンディションを100とすると、生理が重い日は41.9に落ちるという結果も出た。

 そんな環境を少しでも改善しようと始めたのが「職場のロリエ」だが、一方で、メーカーとして商品を製造販売することと、生理用品の備品化を呼び掛けることは、ビジネスとしてはまったく異なる。西本氏はこの点を指摘し、「ハードルもあったのでは。どう進めたのでしょうか」と問いかけた。

 手島氏はまず「国内で数少ない生理用ナプキンのメーカー」という立ち位置について考えたという。「生理の悩み」というと、生理痛やPMS(月経前症候群)などの健康問題がまず挙がるが、それをメーカーが直接解決することはできない。「私たちとしては、職場に良質なナプキンを当たり前のように置くことで、環境を良くするためのサポートができるのではないかと考えました」(手島氏)

 加えて手島氏は「サニタリー系商材は、途中でブランドを変えることはほとんどない」と指摘。ロリエの商品を買い始めるタイミングは非常に限られる。そのわずかなタイミングを狙うためにも、このプロジェクトの意義は大きいという。

 「職場のロリエは若年層からの支持も大きいです。将来的にブランドユーザーになってもらえるように、若年層からの好意や共感を得るための礎として位置付けています」(手島氏)

研修動画で「自分ごと化」してもらう

 では、新しい施策である「職場のロリエ」をどのように企業などに提案しているのか。

 3社によるスモールスタートが好評だったことから、2023年にはプロジェクトを紹介する動画を作成して公開した。二階堂ふみさんが生理の課題や「職場のロリエ」の取り組みについて語る動画だ。これを商談の際に見てもらい、理解を深めている。

 さらに、導入を決めた企業向けの研修動画も作成。生理について理解しておくべき内容を盛り込んだ。「休憩が取れなくて生理用品を買いに行けない」など、具体的な困りごとを想像してもらうほか、「男性が詳しく知っていると変ではないか」という考えを否定。最後に「身近な同僚に思いを馳せよう」「自分にもいたわりの気持ちを持とう」というメッセージを入れた。

 「職場のロリエでは、性別や年齢を問わず、誰にとっても働きやすい環境を作ることを掲げています。『自分ごと化』が大きなポイントです」(手島氏)

 2024年には若手社員の発案で「社内アンバサダー」制度も創設した。花王グループの社員の中で、活動に共感した人に手を挙げてもらい、取引先や知人、家族などに紹介してもらう取り組みだ。現在590名がアンバサダーとして活動。所属企業や地域、年齢、性別を問わず、様々なメンバーが職場のロリエを広めてくれているという。

社内アンバサダー制度
社内アンバサダー制度

 「社内外でファンを増やすことで、ムーブメントを起こせるのではないかと考えています」(手島氏)

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女性が少ない業界でも強い課題意識

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/04/21 07:00 https://markezine.jp/article/detail/48707

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