mshとグッドパッチ、新ブランド誕生の舞台裏
mshでは、基幹ブランドを中⼼にそこから派⽣する商品の展開はできていた。しかし、完全な新しいものはなかなか作れずに苦戦していたという。ブランドとしての次の展開を模索する中、グッドパッチとの共創を開始。ユーザーインサイトを元にした、新しいブランド開発に取り組み始めることにした。
「⽣活者の価値観やニーズが多様化し、購買⾏動も⼤きく変化している今、“真のユーザーインサイトを捉えたブランド開発”がより⼀層求められています。自社の商品はどんな人が買ってくれているのか、また支持され続けるブランドであるにはどうしたらいいのか。ブランドとして向き合う顧客像を明確化し、コミュニケーションプランを含めた統合的なブランド・商品開発が求められています」(江原氏)

リアルな悩みから生まれた“メイクとスキンケアの融合”
では、ユーザーインサイトを捉えた、顧客起点の商品企画はどのように進めていくのか。「Ctrlx」を例に、ステップごとに解説していく。
まずはステップ1、商品アイディエーション。
前例踏襲型のアプローチではアイデアの幅が限定的になり、新規ユーザーの獲得が難しい。そこでグッドパッチが提案するのが「アイデアを出す段階からユーザーにヒントをもらいにいく」方法だ。リアルな声からアイデアを紡ぎ出し、既存の前提や制約にとらわれない自由な発想を促すことで、血の通ったアイデアにしていくという。
「Ctrlx」の場合、ユーザーとの対話の中で、“メイクアップとスキンケアの組み合わせ”という、新しい目元ケアの発想へと繋がった。通常、メイクアップ商品とスキンケア商品は、それぞれ別の棚に置かれており、別のジャンルとして考えがちだが、ユーザーの「目元悩み」を深堀りしていく中で、目元のケアとメイクによるカバーを両立させるという新たな発想が生まれたのだ。

ユーザーニーズを分析し「ブランドコンセプト」への架け橋に
続いてステップ2、ユーザー体験設計。
ユーザーの体験設計を行う上でよくある課題が、実際のユーザー行動が見えないまま、ブランドとしての理想が先行してしまうケースだ。リサーチはしているもののどうもニーズを掴みきれない、ペルソナを作ったもののリアリティがなく実ユーザーの生の声が出てこない……という悩みは多くのブランド企業が抱えているものだろう。そこでグッドパッチが提案するのが、「アイデアは素早く可視化して、ユーザーからフィードバックをもらう」という方法だ。
具体的には、デプスインタビューによって深くユーザーを理解したうえで、ユーザーニーズの構造化と可視化を行うという。ここで重要なのは「これが欲しい」というユーザーの声をそのまま鵜呑みにせず、インタビューの結果を集約・分析し、インサイトを絞り出すことだという。
たとえば「Ctrlx」における調査では、「日常的なケア方法が分からない」という毎⽇のケアの積み重ねによる改善への期待とハードルがある一方で、「今この瞬間にクマをどうにかしたい」という喫緊の課題解決意欲も浮かび上がり、そこから【長期の努力と短期で隠す】両輪のケアというアイデアにつながっている。

またニーズの分析によって「負担を減らして、より健やかな⾃分でいたい」というインサイトも浮き彫りになり、これがCtrlxのコンセプトでもある「ショートカットキー」への架け橋になったという。