ブランドの世界観を貫くための制作体制
AMBIを含むエン・ジャパンのオウンドメディアでは、写真の撮影だけではなく記事の編集やWebデザイン、映像制作などを手掛けており、SNS向けも含めすべてのコンテンツをブランド企画室で内製している。2年ほど前から動画チームとYouTubeチャンネルを立ち上げたり、SNSチームと連携したりと、多メディア展開を進めている。

毎週30分ほど実施される編集ミーティングには、編集チームのほか常務・事業責任者、ブランド企画室室長、プロダクト責任者といった、経営・各部門トップも参加。「この記事が良かった」「ユーザーからこんな声があった」といった報告を交えながら全員でディスカッションしている。

「経営者や各部門のトップから意見はもらうものの、最終的にどの企画をやるのか、何を取り上げて何を取り上げないのかを決定する権限は編集チームに持たせてもらっています。こうした体制で制作することにより『ブランドや世界観にそぐわないものは出さない』というこだわりを貫いた運営ができています。そうすることが、選ばれるメディアやサービスになると信じて運営しています」(白石氏)
ユーザーに選ばれるAMBIのこだわり
近年、どの業界も商品やサービスのコモディティ化が進んでいる。数多ある採用サービスでも、機能面だけを取れば大差はないかもしれない。しかし、ユーザーに支持され選ばれることを最重要テーマとして企業のブランドを発信してきた結果、AMBI自体のブランドも形成されていった。
「様々な利害が絡み合うので、時にはどうするべきか見失いそうになったり、拠り所がなくなったりしてしまうこともあります。その時に立ち返るのは、根本となる思想、考え方、パーパスです。最近はパーパスブランディングという言葉も浸透してきていますが、自分たちが大切にしているパーパスをそれぞれの担当領域でどのように解釈し、仕事を広げていくのかということに日々向き合っています」(白石氏)

エン・ジャパンでは、事業ガイドラインの1つとして「ユーザーファースト主義(forカンパニー)」が掲げられている。一般的に、求人サービスの運営においてはフィーを支払うカンパニー(求人企業)の意向が重視されやすく、結果としてユーザー(求職者)のニーズから乖離してしまうリスクをはらんでいる。その中で同社はユーザーファーストを貫き、求職者からの信頼を勝ち取ることで結果的に求人企業にとっての利益も実現する、というスタンスをとっているという。
そのため、記事で取り上げる企業・人の選定に関しても「中長期的な視点で見て本当にユーザーに喜ばれ、人に薦めたくなるものにできるか」を軸として厳格に話し合う。仮に求人企業が高額の掲載フィーを提示してきたとしても、ユーザーにとって魅力的な記事になると判断できなければ取材・掲載は固辞する。収益は大事だが、収益性の追求によってブランドの世界観を壊し、ユーザーに支持されないものにしてしまうわけにはいかないからだ。そのガイドラインに基づくことで、「誰かのため、社会のために懸命になる人を増やし、世界をよくする」という2022年から掲げてきたエン・ジャパンのパーパスを守っている。
「メディアに記事を1つ公開する際にも、『思想、考え方、パーパスを体現しているか?』と常に意識するようにしています。パーパスを体現するのがコンテンツの役割であり、選ばれる理由を作ると思っています。常に環境が変化し、何が正解かわかりにくい時代です。試行錯誤していますが、パーパスを実現する上で正解にしていくという覚悟で、これからもメディアやコンテンツを発信していければと思っています」(白石氏)