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【特集】“テレビ”はどうなる?

テレビは「主」から「従」へ 横山隆治氏が考える、脱“テレビ1強”時代の広告コミュニケーション

テレビ1強時代が終わった今、広告主が考えなければならないこと

 さて、既に「テレビ1強時代が終わった」ということは共通認識となりつつあると思います。しかし広告主はいまだにテレビCM案を代理店に提案させ、完成したテレビCM用の素材をメインに、その副素材でそのほかのメディアに展開していくという動きをしています。つまり、テレビ1強時代のコミュニケーション開発そのままです。

 もちろん、広告主もテレビの視聴率が落ちていること、若年層はほとんどテレビを観ないことなどを知っています。そこで「ではYouTubeに出稿しよう」とテレビCM素材をそのまま流用しています。果たしてそれでいいのでしょうか? テレビ1強が終わっているのなら、クリエイティブもテレビCM案から始まるのはおかしいのではないでしょうか? そもそもSNS社会の現代で、ブランド側のメッセージだけでマーケティングメッセージが有効に機能するとは思えません。同じ消費者サイドの投稿やインフルエンサーの投稿などから、ブランドに対してどんな「バズるフレーズ」が出てくるか(仕掛けるか)を起点として、コミュニケーション開発をする必要があります。

 当然ブランド発のメッセージ開発も必要ですが、まずはSNS起点のコミュニケーションプランニングを作ってからの「合わせ技」となるでしょう。

 また「バズるフレーズ」には賞味期限があります。CMのように数ヵ月かけて作って、半年、1年使えるというわけではありません。最適なメッセージを最適なタイミングで最適な掲載面に掲出していくことが必要になります。そもそも従来の広告フォーマットで思考していては、「脱テレビ1強」を果たすための、次の広告コミュニケーションの装置化は難しいでしょう。

これからのメディアプランニングの軸となる「新トリプルメディア」

 「テレビ1強」の次の仕組み化(脱テレビ1強)は、おそらく「SNS×コンバージドTV×リテールメディア」の新トリプルメディアによって可能となると思います。新トリプルメディアでは、従来のテレビ(=リニアTV)のCMは、他のメディアを「主」として「従」の存在となるでしょう。つまり、テレビは補完メディアとなるのです。補完するということは一本一本放送ポジションを選んで、しかもインプレッション買い付け(当然アクチュアル保証)になる必要があります。

 テレビ局の人間は、ストリーミング広告やSNS広告やリテール広告を「主」として、リニアTVCMが「従」となることを理解しないといけません。とはいえ、ストリーミングCMもテレビ局の収益の芽なのですから、自分たちでこれからの「主」となるメディアを育てればいいのです。

 ここでリニアTVが「従」となっていくことを示すデータについて図表2のグラフをご覧ください。

図表2
図表2

 これは2018年の関東エリアにおけるテレビCMのインプレッション数(表示回数)とデジタル動画CMのインプレッション数を年代別に示したものです。これが5年後の2023年となると図表3のグラフとなります。

図表3
図表3

 2018年では動画CMが10代・20代でテレビCMに拮抗してきたとはいえ、まだテレビを上回るところまでは達していませんでした。ところが2023年には10代・20代で動画CMがテレビCMを凌駕しています。

 ただ、このグラフで注目すべきはテレビCMと動画CMの比較ではありません。最も注目すべきは、テレビCMのインプレッションのうち60代以上が占める割合が、2018年には43.4%であったものが、2023年には58.3%にまでなっていることです。これは、テレビCMの約6割を60代以上が観ていることを示しています。

 そして観ているというのは正確ではなく、テレビにCMが表示されてはいるのですが、当たっているはずのCMに対しての「認知」は獲得できていないと言えます。特に高齢者では何度も何度も当たっているはずなのにまったく認知していないということも実際に起きます。高齢者はテレビの視聴時間が長い傾向にあるのですが、ある意味「パンチドランカー」になっていて、何十回もテレビに表示されていても認知も関心も起きないということです。一方若年層ではクリエイティブさえ良ければ1回でも認知されることもあって、そういう意味では従来のフリークエンシー理論は崩壊していると言えます。

 あまりに高齢層に偏った到達と到達層の感度が鈍いことで、従来のテレビCMに関する理論は崩壊しています。こうしたことからもテレビ1強のコミュニケーションプランニングがもう限界であると言えるのです。

 リニア放送のテレビCMが主力メディアを補完するものになったとき、当然主力メディアのクリエイティブからプランニングするはずですよね。しかもSNS社会を反映した「消費者サイドの投稿」からコミュニケーションを開発するという発想が出てくるのは自然なことだと思います。

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求められるのは脱テレビではなく、テレビ発のプランニングからの脱却

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役 ファウンダー
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/05/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48805

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