京阪神は商店街が活発、半分弱の人が「値切り」の経験あり?!
田岡:続いて、電通の久下さんに別アングルから、関西消費者のライフスタイル、家族像を深掘りしていただきましょう。
久下:私のパートでは、関西の中でも「京阪神」に焦点を当てています。京阪神は全国的に見ても私鉄が非常に発達しており、その沿線に住む人は多くの場合、サバーバン(都市の郊外や周辺地域、新しい住宅地域など)で暮らしています。

その特徴は15分圏内(第一商圏・徒歩または自転車で移動する15分圏内のエリア)の人口比にあり、これが関西近畿圏は41%、関東は27%と大きく開いているのです。この圏内の人は、生活や通勤圏内で徒歩にてコンビニや小型スーパーにアクセスできる人が多く、「高頻度で少量買いをする」ので、三島さんの関西全域を対象とした分析とは真逆の傾向が見えてきます。

田岡:つまり、関西でも15分圏内で暮らす人たちは、また生活スタイルが異なってくるわけですね。
久下:その通りです。また沿線上にある京阪神エリアの商店街は、全国の3割を占め、かつ全国平均の2倍もあります。沿線に住む人々は、いつものお店で顔見知りの店員から買い物をする傾向にあり、なおかつそこは井戸端会議が生まれるコミュニティの核ともなっています。コミュニケーションの質・量ともに圧倒的に高いので、必然的に「あそこ安いで」というクチコミも生まれやすい。このクチコミ重視率は、関東59%に対して関西は74%です。
可処分時間に関しても、京阪神の平日余暇時間は関東よりも32分長いと出ています。比較的小さなエリアで生活が完結でき、通勤時間や残業時間が短いからでしょう。その分、家族で食卓を囲み、メディア共視聴もします。

金銭感覚ではクーポンの使用率が高く、サンプル請求率は関東の1.6倍。値切り経験のある人は、関東では7%ですが、関西は43%。半分弱の人が値切りをトライしているという、非常にエリアの特徴が出ている数字です。また、変な味や新しい味を「1回試したろ」と思う気持ちは関西が49%に対し関東が34%、関西人はやはり好奇心旺盛ですね。

田岡:なるほど。デモグラフィックデータより、文化的な部分の差異のほうが色濃く出てきますね。
久下:そうなんです。最後、メディア接触行動に関しては、京阪神のほうが関東より長くテレビを視聴し、OOH広告に対する「あれ見たよ」との想起率も高い。私鉄内でのデジタルサイネージの到達率も関東より高い。関東はOOHのメニューが充実する一方、情報が多すぎてなかなか訴求内容が残りにくいのかもしれません。

15分圏内人口比が大きい関西、マーケティングのポイントは?
田岡:一口に関西と言っても、2府4県と京阪神では大きな違いがありますね。マーケットを分析し解像度を上げるには、まず「関西」をきちんと定義しないと、詳細が見えてこないと感じました。
久下:そうですよね。関西の定義については、どのような商材やサービスを扱っているのか=業種業態と、訴求すべき対象顧客=ターゲット、顧客の居住エリア(商圏)の大きく3つをポイントとして、マーケティングの目的に沿ったバリエーションをいくつか作ると良いかと思います。ここまで紹介してきた傾向を踏まえると、次のようなマーケティング・コミュニケーションのポイントが考えられます。

コミュニティが発達し、その中での口コミなどの情報流通が太いことを考えると、生活動線の中で繰り返し訴求に触れるチャンスをいかに作るかが重要だと思います。だからこそ、店頭・交通広告などを上手に組み合わせつつ、家族の可処分時間が長いという特徴を活かし、沿線でのイベント参加を促す施策なども有効ではないかと考えます。