一人ひとりに寄り添う設計で開封率1.2倍、クリック率は3.1倍に向上
大塚:2つ目はカレンダーシナリオです。外出が増えるゴールデンウィーク前にロードサービスの電話番号登録を促す案内を送る、雪が降りそうな時に注意喚起のメッセージを配信するなど、季節性のあるシナリオです。
3つ目はユーザーベースシナリオです。〇歳以上の人だけを抽出して配信したり、車を買い替えるタイミングで手続きのご案内を送ったりと、登録情報をもとにセグメントを設定して配信するものです。その他にも、地域ごとに異なる情報を提供するなど、お客さまが自分ごと化できるコンテンツを意識しています。

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MZ:お取り組みを通して実現した成果について教えてください。
大塚:メールでは、短期指標としては開封率、クリック率、配信停止率、長期指標としては継続率をチェックしています。シナリオを設計して配信を開始した2023年11月との比較で、開封率は1.2倍になりました。お客さまへの送信範囲を広げたうえでの数値であり、大きな成果だと考えています。クリック率は3.1倍になりました。継続率にもポジティブな影響を及ぼしています。電通デジタル社とともにコンテンツを制作し、クリックしやすい導線(ボタンなど)にするなど見せ方も工夫した結果です。
また、メールの末尾に5段階で「内容は気に入りましたか?」というアンケートを設けており、その回答率も3.8倍となり、評価の平均も1ポイント向上しました。
MZ:定性的な成果はいかがでしょうか。
大塚:アンケートにフリーコメント欄を設けており、「有益でわかりやすい内容だった」「保険内容の確認につながって、すごく助かった」「忘れがちな保険の内容を連休前にお知らせしてくれ、すごく細かい対応で嬉しかった」という声をいただいています。特に印象的だったのが「単なる商品の宣伝ではない情報になっているので大歓迎です」というコメントです。
野崎:代理店からも歓迎の声をいただいています。年齢条件によって保険料が安くなるケースなど、個別にお伝えしきれていない部分について、デジタルを通せば該当する方だけを抽出してご案内できるため、「従来届けにくかった層に届けてくれて助かった」との声をいただきました。

AIとCDPの活用で次世代のCRMを目指す
MZ:お取り組みを通して、成果につなげるために意識されていることや、印象的だった気づきはありますか。
野崎:CXの考え方が社内に徐々に浸透してきているのを感じます。事故に遭われた方への対応を担う、全国のお支払いセンターの社員にも浸透してきています。以前は、自らをコストセンターと捉える方も多かったようです。しかし、保険の価値は事故に遭った際の対応の品質が大きく関わり、会社の業績向上につながります。それを伝えると、「自分たちの仕事の意義がわかった」と受け止め、私たちの施策に前向きに取り組んでもらえるようになりました。
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
大塚:従来のシナリオやコンテンツでも一定の成果が出ていますが、A/Bテストなどによる見直しを継続的に行い、引き続きPDCAを回して成果創出につなげていきたいと考えています。また、企画からリリースまで、より効率的に制作できるようにしていきたいです。
野崎:よりお客さまの心情に即したコミュニケーションを通じた、心理ロイヤルティ・行動ロイヤルティの向上を目指しています。具体的には、CDPをさらに活用してお客さまの現在の状況や行動の背景をより高い解像度で捉え、パーソナライズされたメッセージを送りたいと考えています。AI活用と組み合わせながら、より効率的かつ深くお客さまに寄り添うコミュニケーションを実現し、当社への好感・信頼を妥協することなく高めていきたいです。