AIで顧客を“可視化”する、Geminiを活用したペルソナダッシュボードの構築
「AIで顧客を可視化する」というアイデアを実現するため、同社はGoogleのGeminiを活用したペルソナダッシュボードの構築プロジェクトを開始した。
その仕組みはこうだ。まず、Qualtricsで収集した定性アンケートの回答、購買情報やWeb行動データなど、社内外に散らばるあらゆる顧客データをGoogle BigQueryに統合。その膨大なデータをGeminiに入力し、顧客のインサイトを抽出・要約させる。そして、その結果からAIにペルソナの人物像(キャッチコピー、パーソナリティ、ライフスタイルなど)を定義させ、さらにはそのイメージに合ったユーザー像まで生成させる。

完成したダッシュボードには、AIが生成したユーザーのイメージ写真とともに、「『華やかフェミニン、高級好き』」といったキャッチコピーや、好きなファッションブランド、趣味、職業といった詳細なペルソナ情報が並ぶ。さらに、そのペルソナに紐づく実際の顧客群の平均購入額や閲覧商品といった定量データも瞬時に確認できる。


「人が分析すると、どうしても私見が入ってしまいます。AIに客観的な形でまとめてもらうことで、ブランド経験の長いメンバーにも納得感を持って受け入れてもらえると考えました」(飯塚氏)
複雑なデータは、AIによって誰もが一目で理解できる「顧客の顔」へと姿を変えた。これは、社内の共通認識を育む上で大きな一歩となった。
ペルソナ起点の次なる一手、インサイトを具体的なアクションへ
このAIペルソナダッシュボードは、単なる分析ツールに留まらない。具体的なマーケティングアクションの起点となっている。たとえば、「お子さんがいるか」というアンケート結果に基づき、「お子様がいてもストレスフリーに着用できるジュエリー」という切り口でメルマガを配信したところ、開封率は通常の20%アップ、約10%のメルマガ読者が商品を購入した。
今後は、このペルソナをさらに活用していくという。定性データが未取得の顧客も、行動データから類似ペルソナに分類し、パーソナライズされたアプローチを拡大する。さらに、ペルソナごとの広告配信の最適化、ペルソナのニーズの隙間を埋める商品開発、ゆくゆくはペルソナを学習させた接客AIエージェントの開発や研修への応用も視野に入れている。
「お客様とのポジティブなアフェクト(=情緒的なふれあい)を続けることで、購入の瞬間に訪れる強いエモーション(=感動)を最上のものにできるブランドへ。この取り組みを通じて、お客様に長く愛してもらえる関係性を築いていきたいです」(飯塚氏)
エーアンドエスの挑戦は、データとAIが、顧客の「ときめき」という最も人間的な感情に寄り添うための強力な武器になり得ることを示している。
