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クラシルが明かす「1週間で成果を出す」AI時代の高速グロース開発と運用コストの効率化

AIを効果的に活用する秘訣

 続いて、相馬氏はクラシルのプロダクト開発におけるAIの活用について尋ねた。今やAIは多くの企業で活用されているが、便利な反面やたらに使うとコストが嵩むというデメリットもある。どのような使い方をすると事業成果に貢献しやすいのだろうか。

「AIを用いた抽象度の高い取り組みは、経験上うまくいかないことが多いです。AIは無尽蔵にコストをかけられるので、具体的な活用方法を考え、きちんとコストを考慮することが大切です。また、AIツールは年間契約を勧められることが多いですが、日進月歩で進化している分野なので、すぐにもっといいツールが出る可能性があります。こうした過渡期には、あまり長期で使用するサービスを決め込まないほうがよいでしょう」(坪田氏)

持続的なAI活用の判断基準
持続的なAI活用の判断基準

 レシチャレでは、コストのバランスを取りながらAIの機能を活用している。提携しているスーパーやドラッグストアなどでキャンペーン対象の商品を購入してレシート画像をアップロードすることでポイントが付与されるレシチャレでは、ターゲティングにAIを使用した。

「たとえばA社の飲料をずっと買っている人は競合B社にとってもターゲットユーザーとなるため、B社のキャンペーン時にポイント還元率を上げて購入してもらいやすくする。あるいは、過去30日間にその商品を購入していないユーザーだけを特定してアプローチすることで新規顧客獲得を狙うなど、AIによる過去の購買行動に基づいた分析をターゲティングに活用しています」(坪田氏)

AIレシート分析を用いたターゲティング
AIレシート分析を用いたターゲティング

 また、レシートからいつどこで何を買ったのかといった情報を収集し構造化するのにもAIを活用している。

「レシートから店舗名や住所、購入日や商品名、合計金額、支払い方法などの情報をOCRで分類・構造化しました。レシートはチェーンごとにデザインが異なり、商品名もチェーンごとに省略の仕方が違うので、きちんと分類して同一商品を一致させる名寄せに苦労しました」(坪田氏)

AIの精度を裏付け、コストを抑える

 レシチャレでAIによるレシート分析を実現するにあたり、運用コストがかかるという高い壁があった。月間1,000万枚レシートが投稿されるとすると、ユーザーに付与されるポイント分のコストに加えて、OCRやLLM、その他データ費用等によりコストは1,000万円を超える。これだけの運用コストがかかるとなると、社内での承認を得るのも難しい。では、どのようにしてレシチャレを実用化していったのだろうか。

「どのようにしてコストを抑えて実現するか? という点にはかなり工夫をこらしました。まずはゴールに向けて段階的なステップを設定し、最小サイズで検証を実証することを繰り返していきました。その最初のステップが、ニーズの検証でした」(坪田氏)

 当初は、アップロードされたレシートの内容はすべて人間がスプレッドシードに入力するという方法で収集・構造化し、KARTEを活用してニーズ検証を実施した。ユーザーのニーズを把握できたら、人力で収集したデータとOCRで読み込んだデータを比較して、分析精度の確認を行っていった。こうしてAIの分析精度を確認しながら、徐々に人力から自動化へと置き換えていく。

 次のステップとして運用コストへの対応だ。こちらは、プロダクトのフェーズに応じて、レシート解析に必要なAPI選定を見直すことで、レシート1枚あたりの分析代は当初試算したものの5分の1と大幅に削減できた。こうしてレシチャレでのOCR活用を実現していった。

 このように運用コストとニーズを確認しながら開発を続け、現在のキャンペーンでは、POSが200%、中には400%も向上する成果が出たものもあるという。レシチャレの活用によって、メーカーは小売店で棚落ちしそうな商品の維持や、棚獲得の交渉力向上が期待できるわけだ。

 これまでBtoCのサービスを中心に手掛けてきたクラシル。高速PDCAによるプロダクト開発によって、レシチャレではBtoBtoCで価値を作っていく。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2025/12/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49576

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