次の時代に向け注力する「長期継続」「体験機会」という価値
次に議論されたのが、「未来に向けた価値創造」だ。これについて、梅田氏2つの方向性を示した。

1つは、商品のリペアやリセールを通じた「循環」、そして「顧客との長期的なつながり」という思想の実現だ。単に商品を販売して終わりではなく、リペアを通じて商品がより長く使われるようにしていく、あるいは「グリーンバトン」と呼ばれるリセールサービスを通じて商品を次の顧客に循環させ、長期的な関係性を築いていくというものだ。
ちなみにリペアサービスに関しては、以前導入したKARTE Jamを活用し、店舗に持ち込む前にビデオ接客で診断するというサービスを展開。これにより、「店舗で確認した後に『対応不可』で返品するといったリスクがなくなるほか、商品そのものの状態を映像で確認できるので、その後のやり取りも非常にスムーズに進みます」と梅田氏は説明する。
金井氏も「R&Dのプロトタイプから発展したソリューションが、現場で利用されることで新しい価値を生み出すようになり、非常に嬉しいです」と応じ、続けて「KARTEを活用して、商品を購入したお客様に適切なタイミングでリペアの案内を出すなど、よりサービスを充実させる取り組みにつながっていくことを期待しています」と梅田氏に提案する。

そしてゴールドウインが目指すもう1つの価値提供の変革が、モノ売りからコト売りへの転換だ。商品を売るだけではなく、その商品を使って登山やランニングなどのアクティビティ体験を創出していくこと。その象徴として、2年後に「GOLDWIN PLAY EARTH PARK(ゴールドウイン プレイアースパーク)」という公園を富山・南砺市にオープンすべく奮闘していると言う。
この公園では、キャンプやスポーツなど様々なアクティビティが楽しめるほか、子どもを対象にした自然学習のイベントなども企画しており、「商品から体験まで一貫した価値を提供していきたいと考えています」と梅田氏は話す。

データ活用において欠かせない「共創」
モノからコトへの転換において大事になってくるのが、「その転換ポイントをいかにデータでつないでいくか」ということだ。そうした意味で、「CONNEXIONsの取り組みは良いリハーサルになっていたと思います」と梅田氏も金井氏も口をそろえる。
「当社の製品は『人と自然の共生』というイメージがありますが、その一方で現代は、下支えするテクノロジーやデータの存在を無視することはできません。そうした時代で、データのために体験を作るのではなく、体験の結果としてデータが取得できている、という順番が最も重要だと思います」と梅田氏は言う。
「それは当然、1社だけでできることではありません。プレイドのような企業との協力があって可能性が広がるのです」と梅田氏は続け、データやAIが当たり前の時代になっていく現在、企業の壁を超えた「共創」の意義を強調して講演を締めくくった。