データで“共通の顧客像”を形成。OMOを見据えたプレイドの伴走支援
MZ:コーセーの課題感に対し、プレイドは具体的にどのような提案・支援を行ったのでしょうか?
内山:まず、EC担当者から店頭スタッフまで、全部門で「共通の顧客理解」を形成することを提案しました。これは、オンラインとオフラインを融合させるOMOを推進する上でも不可欠だと考えたからです。
具体的には、部門横断の勉強会を実施しました。それまで蓄積されていた「KOSÉ ID」の購買データと、「KARTE」で取得したオンライン上の行動データを掛け合わせ、「どのようなお客様にご購入いただいているのか」「今後ロイヤル顧客になっていただけそうなのは、どのような方か」「その方々の体験上のボトルネックはどこか」といったテーマで、ファクトに基づいた顧客理解を深めていきました。

塩谷:これまでも、ビューティコンサルタント(美容部員、以下BC)やECメンバーは研修を通じて「DECORTÉ」というブランドへのインプットを受けていました。しかし、お客様の反応や行動をデータとして可視化し、ブランド作りへフィードバックするサイクルは十分ではありませんでした。
今回の取り組みでデータという客観的な裏付けが加わったことで、「どのお客様に、どのような提案をすべきか」というコミュニケーションの解像度が飛躍的に高まったと実感しています。
内山:もう一つ、ブランドのクレド(信条)に基づく「Web接客のアセスメント」の作成も支援しました。たとえばWebサイトのポップアップは、タイミング次第では押し売りに感じられてしまうこともあります。店頭の接客と同じように、「誰に、何を、いつ、どのように」情報を届けるかを設計し、ブランドが大切にする価値観をWeb接客に反映させることが重要です。
塩谷:我々が最も重視しているのは、すべてのタッチポイントでブランドのあるべき姿を再現することです。多くのお客様にご満足いただけている店頭での体験を、そのままWebサイトの世界観に落とし込み、ブランドらしい体験の提供場所をさらに広げていきたいと考えています。
仮説が確信へ。データがもたらした社内の変化
MZ:プレイドによる顧客分析で、具体的にどのような発見がありましたか?
塩谷:お客様のことを、これまで以上に深く、そして明確に理解できるようになったと感じています。まず、自分たちが立てた顧客戦略が正しかったのかを、データで検証できました。
たとえば、「ECと店舗では購入サイクルが違うのではないか」という仮説がありました。分析の結果、ECでは多くのお客様が2回目の購入までに50日、店舗では60日かかることが分かり、ECの方がリピートまでの期間が短いことがデータで証明されたのです。
さらに、2回目の購入までの期間によって、お薦めすべき商品が異なることも明らかになりました。90日以内に再購入するお客様には初回とは“違う商品”を、90日を超えたお客様には“同じ商品”をお薦めする方が効果的だという傾向が見えてきたのです。
もう一つ、勉強会でN1分析(一人のお客様を深く分析する手法)をしていて、面白い発見がありました。
年間購入金額が約10万円、サイト訪問回数も20回以上という、弊社の顧客セグメント上「ロイヤル顧客」に分類されるお客様に関する発見です。購買履歴を見ると、1年間のうち5回購入されていて、うち4回は百貨店、最後の1回がECサイトでした。これだけ見ると「百貨店メインで、最後にECを使ったお客様だね」と認識できますが、顧客行動をより細かく読み解くと、百貨店に行く日の前日は必ずECサイトを閲覧していたんです。購入予定品の下見をされていたんですね。
お客様の行動をそこまで細かく可視化されると「なるほど」と。そこで、「ECサイトを見てから百貨店に来訪するお客様は、ロイヤル顧客につながりやすい可能性があるね。だったら、その方に対してより適切な接客ができるような施策を考えた方がいいよね」といったことを議論しました。N1分析により解像度が上がり、「じゃあ次に進めよう」という勇気をもらえましたね。

塩谷:この変化は社内にも大きな反響を呼びました。普段こうした分析レポートを直接目にしないメンバー、たとえば商品の情報をマニュアルに落として店頭のBCに伝える教育担当にもインプットしたところ、「顧客データを見ることで、お客様への理解度が格段に上がった」というフィードバックが寄せられています。データが部署間の「共通言語」となり、より具体的で活発な会話が生まれています。
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