MAU1,300万人のメディアを抱えるヘルステック企業の挑戦
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、Ubieが掲げているミッションや、展開しているサービスについて教えてください。
近藤:Ubieは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションのもと、2017年に医師とエンジニアで創業したヘルステック企業です。情報社会の現代でも、医療における情報の非対称性は高く、患者や医療従事者へ十分に行き届いていないのが現実です。Ubieはそんな状況をテクノロジーの力で変え、医療先進国の日本から、世界中の医療に貢献していくことを目指しています。
代表的なサービスは「症状検索エンジンユビー」および「ユビー病気のQ&A」で、どちらも生活者向けのメディアです。「症状検索エンジンユビー」は入力された症状に応じて、疾患の可能性や受診すべき医療機関を案内するサービスで、主に医療機関を受診する前の患者さん向けのものとなります。一方、「ユビー病気のQ&A」は主に医療機関受診後の患者さん向けに、特定の疾患における検査内容、治療方法、副作用等の情報を提供しているサービスです。また、「ユビー」のコア技術である問診エンジンを活用し、医療機関や製薬企業向けのBtoBサービスも展開しています。

MZ:「症状検索エンジンユビー」と「ユビー病気のQ&A」は月間でどのくらいの方に利用されているのでしょうか。
近藤:「症状検索エンジンユビー」は月間利用者数700万人、「ユビー病気のQ&A」は月間利用者数600万人、あわせると月間1,300万人ほどの方々にご利用いただいている、大規模な医療・ヘルスケア関連メディアです。

楽天グループのLinkShare Japanにて、アフィリエイト広告、リスティング広告の営業・運用に携わり、その後パートナーアライアンスを担当。2014年7月より動画広告プラットフォームTubeMogul(現Adobe)にて、主にブランド向け動画広告の営業・運用に従事。2016年5月にFacebook Japanに参画。執行役員 営業本部長を務める。2025年4月より現職。
パーソナライゼーション広告は本当に“悪”か?元Meta執行役員営業本部長の問い
MZ:生活者向けメディアを軸に展開されてきたUbieですが、2025年4月に新たな広告事業「ユビーAds」を始動されました。この挑戦にはどのような背景があったのでしょう。
近藤:「症状検索エンジンユビー」や「ユビー病気のQ&A」は生活者の方へ無償で提供しているサービスだからこそ、今後も事業を継続していくためにはマネタイズが必須です。医療機関・製薬企業だけでなく、さらに広いカテゴリーの企業様と協業していくために、Ubieならではのヘルスケア領域のデータを、Web広告に活用するマーケティング支援事業を立ち上げました。
MZ:近藤様はMeta社にて、日本での執行役員営業本部長を務められたご経験をお持ちですよね。なぜ、新たにUbieでヘルスケアデータを使った広告事業に挑戦しようと思われたのですか。
近藤:テクノロジーで医療を変えようとしているUbieなら、私のこれまでのデジタル領域での経験を、まったく新しい価値として提供できるのではないかと思ったからです。
Metaでは約9年間、多くの広告主様と向き合い、デジタル広告の可能性と課題の両方を見てきました。なかでも私が担当してきた領域はパーソナライゼーション広告。Cookie規制や個人情報保護などの世論の高まりを受け止めつつも、個人的には「興味関心に基づく広告配信は本当に“悪”なのか?」という問いを持ち続けています。
情報があふれる現代だからこそ、適切にデータを用いて一人ひとりに合った情報をお届けすることは、ユーザーにとっても大きな価値を持つのではないでしょうか。Ubieが抱えるデータはセンシティブなものですが、それはユーザーの具体的な「悩み」そのものです。だからこそ、その悩みに的確に応える情報を、まさに必要としているタイミングで「医療迷子」の方にお届けできると考えています。せっかく「ユビー」に訪れたなら、情報を「閲覧して終わり」にせず、その後の「行動」に移していただきたい。「ユビーAds」が少しでもその後押しになれたらと願っています。