AIというバディがマーケターの地位向上に一役買う?
──顧客に新しい体験価値を提供するために、マーケターはどのようなことができると考えますか?
水谷:AI時代、マーケターの役割はセグメントを切ったりPDCAを回したりすることよりも、AIの結果を見ながら「どのように改善していけば良いか」を考える役割に変わっていくのではないでしょうか。

水谷:AIが圧倒的に優れているのは、1to1でユーザーに対応できる点です。たとえば、100万人のユーザーに対して100万通りの対応ができるほか、様々なデータから多くの示唆を見出せます。そのため、マーケターも自身の手応えやROIを明確に示せるようになり、社内での発言力や地位も向上していくと思います。
加藤:AIを活用すればターゲティングの精度とスピードは圧倒的に向上しますし、マーケティング施策のシミュレーションなどもAIエージェントを活用しながらできるようになってきています。マーケターにはAIと“バディ”のように付き合う(使いこなす)能力が必要になってくるのではないでしょうか。
デジタル・ボディランゲージを見逃すな
──AI時代のCX向上の道標として、Brazeでは「デジタル・ボディランゲージ×AI」をキーワードに掲げているとうかがいました。詳しくお聞かせください。
水谷:デジタル・ボディランゲージは、アプリやWeb、メール、SNSなどが示す行動、たとえば閲覧や購入、離脱、エンゲージメントなどの無言のメッセージのことです。消費者一人ひとりの無言のメッセージを捉え、AIを活用しながらどのようにコミュニケーションをしていくのか。この姿勢がBrazeの掲げる「デジタル・ボディランゲージ×AI」の趣旨です。
たとえば、複数の靴のサイトを閲覧しているユーザーがいたとします。その方に特定の商品をレコメンドするのではなく、最適な靴の選び方を指南する記事を案内するのがデジタル・ボディランゲージ×AIの思想です。ユーザーが「まさにこれが見たかった」と感じるようなコミュニケーションを実現します。
加藤:確かに、いきなり特定の商品を提案されても唐突さを感じる方が多いですよね。選ぶプロセスから自然に入って、コミュニケーションを深めていくほうが良いと思います。
CXの話にもつながりますが、顧客は商品だけを見て購入を決めるわけではありません。その周辺にある体験や受けたサービス、そしてセールスやコンタクトセンターなど、すべての接点を通じて「この会社が好きだな」「この商品が良いな」と感じることも、購買の動機になっているはずです。
──デジタル・ボディランゲージ×AIの思想は、Brazeのプラットフォームへどのように落とし込まれていますか?
水谷:大きく三つあります。一つ目が「Agentic AI」です。特定の目標やタスクを達成するため自律的に行動するエージェントにより、マーケターは指揮者のように「どのエージェントをどのように組み合わせて処理させるか」という指示を出す役割を担うことになります。二つ目が「Generative AI」です。自然言語による対話形式で、マーケティングメッセージや画像、コードなどのコンテンツを生成し、マーケターの生産性を向上します。最後の「Predictive AI」は、履歴データを活用して将来の行動と結果を予測可能にするものです。より購買可能性の高いユーザー層を自動抽出したり、チャネルや配信時間をAIによって自動最適化したりします。
先日米国を訪れた際、ある企業のマーケティング担当者から興味深い話を聞きました。米国にはAI関連の企業が数え切れないほどありますが「マーケターがAIを活用する場合、Braze環境内ですべてが完結することに圧倒的なメリットがある」と言うのです。わざわざ別のツールと連携したり、複数のオペレーションを管理したりする手間がかからない点を評価いただきました。

