自然なUGCを促す3つの創出術【事例紹介】
UGCを促進するには、消費者が思わず参加したくなるような仕掛けが重要です。ここでは、そのヒントとなるアプローチを、国内外の好事例とともにご紹介します。
(1)【参加型】ハッシュタグチャレンジでUGCを誘発(花王「ビオレUV」)
出典:ミンテルジャパンレポート「Eコマース・トレンド – 2023年」
花王はTikTokで「ビオレUV アクアリッチ」のプロモーションを実施。エフェクトを用いたハッシュタグチャレンジを活用し、ユーザーが楽しみながら参加できる企画を展開。発売後約半年で600万本の出荷を達成し、UGCによるエンゲージメント効果を証明しました。
(2)【共感型】テーマ性でUGCを創出(英国・ダヴ:ユニリーバ)
ダヴは、TikTokの「Bold Glamour」フィルターが美容に関する否定的なステレオタイプの形成につながる可能性があるとの認識から、2023年に「#TurnYourBackキャンペーン」を実施しました。本キャンペーンでは、ユーザーに対して 「#TurnYourBack」、「#BoldGlamour」、「#NoDigitalDistortion」の各ハッシュタグを付与した動画投稿を推奨し、自身の立場を明示することを促しています。
ダヴは、こうした活動を通じて美容に関する有害なステレオタイプの払拭と、より多様性と包摂性を重視した美容基準の普及を目指しています。
このダヴの事例は、ボディーポジティブや多様性を反映した商品や美容体験を提供することで、ブランドが消費者から共感を得て、支持される存在へと進化できることを示しています。
(3)【コミュニティー型】ペット飼い主との交流を購買促進へつなげる(米国・Petco)
米国のペット用品ブランド「Petco」は、ソーシャルメディア上でペット飼い主のコミュニティーを育成し、交流の場を積極的に開拓してきました。2021年にはFacebook上で「ライブショッピングイベント」を開催し、約100万人のペットオーナーを動員。イベント中も参加者とのリアルタイムな交流を行い、購買促進につなげることに成功しました。
この事例は、UGCを単なる情報発信ではなく、消費者同士の「社交の場」として活用することで、ブランドとの関係性を深め、購買行動へと自然に誘導できることを示しています。
企業に求められる「透明性」とUGCの活用
ミンテルの調査によると、消費者の多くは企業が発信する情報の真偽を見極めることが難しいと感じており、情報公開の透明性を強く求めています。特に「企業やブランドが提供する虚偽や誤解を招く情報には罰則が必要」と考える人は全世代で6割を超えており(図5)、企業に対する消費者の目は非常に厳しくなっています。
これは、UGCを活用する際にも、単にポジティブな共感を集めるだけでなく、「作られた口コミ(ステルスマーケティング)」と受け取られるリスクや、消費者からの厳しい監視下にあることを十分に認識する必要があることを示しています。
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人(2024年11月)
出典:ミンテルジャパンレポート「エンパワーメントと透明性 – 2025年」
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このような環境下では、企業はスペックや機能、安全性などの「事実」を透明性を高く伝えることに加え、UGCを通じてリアルな使用感や消費者の声を誠実に受け止める姿勢が求められます。特に、批判やクレームといったネガティブなUGCに対しても、それらを隠蔽せず真摯に傾聴し、対応することが、消費者との信頼構築に不可欠です。
企業がUGCを「創出」する際には、そのリスクを十分に認識しつつ、ネガティブな声も含めて「透明性」をもって向き合うことが重要です。
消費者の声に誠実に対応することで企業イメージを向上させた事例としては、スターバックス・ジャパンが挙げられます。環境負荷軽減のために導入していた紙ストローを、SNS上の不評を受け止めて2025年からは100%バイオマス由来の生分解性バイオポリマーストローへ切り替えると発表しました。
さらに、有楽製菓のように子ども向けの駄菓子が、他国の子どもの笑顔を搾取した原料から作られている、という原料調達を巡る自己矛盾をオープンにし、値上げに関する情報を積極的に開示するケースも見られます。このようにオープンな姿勢を示すことで、消費者から好意的に受け止められている企業も存在します。
これらの事例が示すように、UGCの活用には「創出」と「傾聴」の両面があり、どちらも「透明性」という観点からバランスよく取り組むことが、これからの企業に求められる姿勢と言えるでしょう。
