AI×人の眼で、表現の「客観的なモノサシ」を作る
MZ:『DEI Quick Checker』の具体的なサービス内容について教えてください。
渡辺:『DEI Quick Checker』は、「DEI評価」と「コンセプト評価」の両軸で生活者からの受け取られ方を可視化することで、表現の攻め引きに客観的な判断軸を提供できるサービスです。オリコムでは2023年より、アメリカにある全米広告主協会(ANA)のジェンダーバイアス測定基準『GEM』を日本市場へ導入・推進してきました。『DEI Quick Checker』では、GEMの調査を通じて得た知見をベースに、NTTデータが提供している産学共創プロジェクトから生まれた脳情報予測技術『ニューロAI(NeuroAI)』を活用し、より包括的な視点であるDEIに測定範囲を拡げた独自モデルを構築しています。
重要なのは両方の数値のバランスであり、DEIスコアが高くても、肝心のコンセプトが伝わらなければ広告としての意味がありません。
DEIスコアは100を基準に数値が上下するのですが、数値を絶対値として評価するのではなく、その広告で伝えたいメッセージを踏まえ、どのラインであれば作り手と受け手のギャップが少なくなるのかを分析、考察した上で判断しています。

MZ:他社のリスク検知ツールやSNSリスニングとは、どのような点が決定的に異なるのでしょうか?
渡辺:従来のツールが事後の「火消し」対応に重点を置くのに対し、『DEI Quick Checker』は事前に「火を作らない」ことを目指しています。文章だけでなく動画や静止画などクリエイティブ全般を対象とし、企画段階から効果測定まで柔軟に活用できます。
また、単純にスコアを提示するだけでなく、DEIとクリエイティブの両面に精通したアナリストが要因を分析して、改善の方向性まで提案するのも特徴です。
「ただの指摘では終わらない」ニーズに合わせた提案も
MZ:具体的にどのようなアドバイスをもらえるのでしょうか?
渡辺:たとえば、「女性『でも』大丈夫」「男性『でも』大丈夫」といった「助詞」の使い方は、「できないのが当たり前」という前提があるように聞こえてしまいます。そのような場合は言葉遣いを変更したほうが良いと提案しています。加えて、単に「『でも』を変えてください」というだけでなく、その企画意図や全体として何を伝えたいかを踏まえ、「このような企画意図でこのようなことを訴求したいのであれば、この言葉遣いではなくこのような表現にしたほうが良いですよ」というところまで踏み込んでフィードバックを行っています。
渡辺:また、生活者がクリエイティブから受け取る情報として大きいのは言語情報ではありますが、もちろん仕草や表情も重要です。たとえば「家事をしている女性」がいたとします。女性が家事をすること自体はDEIの視点において問題ではありませんが、そこで描かれる女性の表情や仕草、佇まいに対して指摘を入れることはあります。なぜなら、家事という行為をその登場人物がどう捉えているかがDEIの視点では重要だからです。
仕草・表情・言語、どの要素であっても、「企画意図を踏まえた上で、生活者にどう伝わるか」という視点は変わりません。お客様のニーズや重視されるポイントに合わせて、複合的な視点からより良い表現方法をご提案しています。

