「価値を生むデータ」に集中し、“ゆるい好意”を創出
課題に対しハウス食品グループは、「購買データを増やす」という発想ではなく「価値を生むデータに集中する」戦略へと転換した。一般的なCRMが、購買実績のある顧客を起点に関係深化を図るのに対し、同社は購買に至る前の段階から関係づくりを始めようとしたのである。具体的には、購買直前の最も強い予兆である「想起=思い出し」を中核指標に据え、生活内での自然な接触データをCX(顧客体験)指標として再定義した。
8割の“見えない生活者”を新たに購買データで囲い込むのではなく、これまで捉えられてこなかった「接触」や「思い出し」の兆しを、意味のあるデータとして可視化する。そのために、購買回数や金額ではなく、生活者が日常の中でブランドを思い出し、無意識に選択肢に入れるまでの“前段の接触データ”を価値と定義した。
その具現化として、LINE公式アカウント内にLINEミニアプリ「HOUSE QUEST WORLD」を開設した。コンセプトは「あれも、これも、ハウスだったんだ!」。研究開発や原料調達といった消費者に伝わりにくいグループの複雑なバリューチェーンを、島を巡るような世界観のゲーミフィケーションとして構築した。
同取り組みでは三層構造による体験設計として、LINE公式アカウントを「気づきを生む入口」、LINEミニアプリを「日常的な接触を担う体験ハブ」、会員サイトやファンコミュニティを「関係を育てていく場」と位置付け、顧客接点ごとの役割を明確化した。
日常の接触の役割を果たすLINEミニアプリ内では、以下の要素を通じてプッシュ型ではなくプル型の接触循環を生み出している。
- ミッションとクエストガチャ: 日常の中でブランドに触れる機会を創出し、アイテムを収集する楽しみを提供
- 体験の可視化: 商品画像とJANコードをOCR(光学文字認識)AIで紐付け、生活者が手元の商品を通じてブランドのこだわりに気づく仕掛けを導入
これにより、スーパーの棚前でふとブランドを思い出す“ゆるい好意”の創出を目指す。インセンティブ予算に依存せず、コンテンツそのものの粘着性で関係を深める意図となっている。
実際の取り組みの成果としては、開始約3ヵ月半で年間目標の登録者数を達成した。特筆すべきはユーザーの熱量で、ヘビーユーザーの平均滞在時間は一般的なキャンペーン比2.6倍となった。
さらに、中核指標である「想起」に関連する数値も飛躍的に向上した。ヘビーユーザー率は目標比2.3倍、再訪率は1.3倍を記録。この関係性の深まりはLINE公式アカウント全体の運用にも波及し、LINEミニアプリ登録者に対するメッセージの開封率は従来比で10.7%向上、クリック率は従来の約7倍へと大幅改善された。
今後は、2026年1月より参画対象をグループ会社へ拡大し、LINEミニアプリ内のガチャ対象アイテムも700件以上に拡充する計画だ。また、2026年1月から実装するJANコード読み取り機能により、購買前から購買後までの行動ログを一気通貫で可視化。グループを横断した「生活内CX基盤」としての完成度を高めていく。
取り組みの関係企業:ハウス食品グループ本社(広告主)、博報堂(広告代理店)、SP EXPERT’S(制作)
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