最新技術を駆使し、音声の魅力を最大限引き出した大塚製薬「ポカリスエット」
━━音声ならではのテクニックを駆使した作品に贈られる「Ear Candy」部門。ポカリスエットの『サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」』が受賞しましたね。
佐藤:耳が喜ぶ「クラフト(技術)」が素晴らしい作品です。バイノーラル録音(3D録音)を使い、円陣の真ん中にいるような体験を360度の立体音響で実現した。ポカリがこれまで築いてきた「部活を頑張る人を応援する」というブランドアセットを、音声だけで力強く表現していました。
嶋:音声広告はラジオの時代から技術が磨かれてきたので、すでにパターン化されていると思われがちですが、今、まさにイノベーションが起きています。イヤホン視聴という聴取スタイルの変化に合わせて工夫をしたり、録音手法など制作のテクノロジーも進化したりしている。映像のような情報の足し算ではなく、音声広告は音だけ使う「引き算」のコミュニケーションだからこそ、リスナーが頭の中で余白を埋め、ブランドの世界観へ没入できる。
佐藤:ウイスキーの『Talisker』の事例も良かったですね。街の雑踏から、いきなり大自然の海の音へと切り替わる。あれを夜にイヤホンで聴くと、一瞬でスコットランドの海岸へ連れていかれるような感覚になる。
橋本:シーンの切り替えで「移動感」を出すのはSpotify広告の得意技です。金麦の「蛍の光」もそうですが、言葉で説明せずとも音だけで「今、ここじゃないどこか」へ連れて行ってくれる。それがSpotifyの没入体験をより深いものにしています。
ファンダムとの「掛け算」が生むヒットの兆し
━━ファンとのエンゲージメントを評価する「For the Fans」部門。日本コカ•コーラの『い・ろ・は・す』と藤井風さんのコラボレーションが印象的でした。
佐藤:アーティストのファンダムとい・ろ・は・すのブランドメッセージの足並みが、非常に綺麗に揃っていました。無理にアーティストを広告に合わせるのではなく、お互いがWin-Winになる設計。藤井風さんという絶大な影響力を持つ存在と、ブランドがセットで記憶に残る、完成度の高いキャンペーンでした。
嶋:1970〜80年代に多くのヒットソングがCMから生まれた時代を彷彿とさせました。Spotifyの広告から新しいヒット曲が生まれる可能性を強く感じますね。単なるタイアップではなく、楽曲の世界観とブランドの世界観が「掛け算」になっていました。
日本コカ•コーラの『い・ろ・は・す』と藤井風さんのコラボレーション
橋本:アプリのトップページをジャックする広告メニューから、コアなファンが集まる「This is 藤井風」プレイリストへのスポンサードまで、ファンダムの濃淡を意識したメディアプランも素晴らしかったです。別のアニメの番宣事例では、オンエア前は大きなファンダムを持つ主題歌アーティストの楽曲紹介、後はアニメの内容を中心に、前後で声優のナレーション内容を変えるなど、ファンへのリスペクトが細部に宿っていました。
嶋:お互いが得をする「共創関係」をプラットフォーム上で作っていくことが、デジタル時代のクリエイティブにおいては重要です。特に対象が「音楽」である場合、リスペクトを欠いた表現はすぐに見透かされてしまいますから。

