メディアハック(2)「一時停止画面」を購買のきっかけに
HEINEKEN - STREAMING BARS
ブラジルでは、動画配信サービスを見ながら自宅でビールを飲む人が増えています。これはビールブランドにとって、まさに「飲まれる瞬間」に近い場所にいる生活者と出会える状況です。しかし、動画視聴中に流れる広告は、多くの場合「邪魔なもの」として嫌われてしまいます。そこでハイネケン(Heineken)は、広告を割り込ませるのではなく、視聴体験の一部に変える方法を選びました。
Netflixで展開された「Streaming Bars」では、視聴者が動画を一時停止すると、CMの代わりに画面上にバーチャルバーが現れます。たとえばドラマ「Vikings」を見ている視聴者には「ヴァルハラのような楽園へようこそ!」といった、作品の世界観に合わせたメッセージをバーテンダーが語りかけます。その流れで「一杯どう?」と。
視聴者は、リモコン操作だけでそのまま注文が可能。即時宅配サービスと連携し、約10分で冷えたビールが自宅に届く仕組みも用意されました。視聴に敬遠されるはずの「一時停止」を、体験が広がる楽しい瞬間に変え、広告から購買までの高いコンバージョンを生み出す施策となりました。
メディアハックとしての広告
これらの事例に共通しているのは、メディアを「広告を載せる場所」として扱っていない点です。そのメディアがいつ注目され、どう広まり、最終的にどんな行動が起きるのかまでを、一つの流れとしてプランニングがなされているのです
メルカド・リブレは、必ずニュースになる優勝セレモニーを起点に、話題化からクーポン探し、購買までをつなげました。またハイネケンは、嫌われがちな「一時停止」を、番組体験を広げるチャンスに変えているのです。どちらの施策も遠回りになりがちな購買プロセスを短縮し、販売のショートカットになっていることも特徴的です。
アイデアの出発点は表現ではなくメディアの構造。人の注意が自然に集まる瞬間を見つけ、そこからユニークなメディア体験を提供することで生活者の注目を集めています。
カルチャーコネクター(1)「人気ドラマ×保険」のエンタメ訴求
SEGUROS DEL ESTADO - FICTIONAL INSURANCE
保険は生活に欠かせない存在ですが、多くの人にとっては「難しい」「自分にはまだ関係ない」と感じられがちです。そこでコロンビアの保険会社であるセグロス・デル・エスタード(Seguros del Estado)は、広告で保険商品を説明するのではなく、人々が日常的に楽しんでいるエンターテインメントの中で体験してもらう方法を選びました。
舞台となったのは、国民的な人気を誇るテレビドラマ「El Rey del Despecho(失恋の王様)」。主人公のダリオが、失恋や挫折を乗り越えていく主人公の物語に、多くの視聴者が感情移入しています。このキャンペーンでは、視聴者が好きな登場人物を選び、そのキャラクターに生命・医療・事故の保険をかけることができました。もし物語の中でその人物に不幸な出来事が起きた場合、実際の保険金が抽選で当たる仕組みです。
テレビドラマの展開そのものが「もしも」を考えるきっかけとなり、視聴者は登場人物の運命を通じて、保険の役割を自然に理解していきます。ここでメディアは、広告の場ではなく、感情を通じて保険を知る体験として機能しました。
