時代のインサイトと独自の価値をつなぐ表現
米田:「透明な爽快感」がどのような価値なのか、もう少し詳しく知りたいです。これは三ツ矢サイダーの特徴にも関わると思うのですが、いろいろな有糖炭酸がある中でどのような存在だと思っていらっしゃいますか?

山下:ヘビーユーザーからは、「押し付けがましくない」「余計なものがない」といった声を多くいただきます。ある種、「空気のような存在」として受け入れられているのが特徴です。
山上:飲むことによって、気持ちの曇りやモヤモヤが全部なくなる感覚、つまり「透明な爽快感」につながるのは、そもそも液色が透明であることも一つの要因だと思いますが、こうした存在であることも影響していると考えられます。飲むことで自分もクリアになっていくような商品は、他にあまりないと思いますね。
米田:三ツ矢サイダーは、炭酸の刺激で強く気持ちを高揚させるというよりも、「爽やかな炭酸で心身が澄んでいく」という存在なのですね。
山下:はい。こうしたインサイトや価値を踏まえて、本年の広告プロモーションは「青空を飲んでゆけ。」をキーメッセージとしています。
山下:下ばかり向いてしまうような時にも、青空を仰ぎ見て、三ツ矢サイダーを飲めば、心が澄みきる。今後放映予定のCMでもこのような価値をお伝えするべく、「青空をそのまま飲んでいるような主観の映像」や「炭酸のようなキラキラとした天気雨の演出」、「雲一つなく澄みきった青空」とともに描いています。
これに限らず、コロナ禍が明け始めた2024年には「一緒なら、もっと楽しい!」というメッセージを打ち出し、タレントさんが子供と一緒にキャンプを楽しむようなプロモーションをしていました。その時々のお客様のインサイトに対して、三ツ矢サイダーができることを考え続けていくことが、次の150年、200年に繋がっていくのだと思います。
green colaと三ツ矢サイダーが目指す、それぞれの未来
米田:今回は、今から世の中に出ていくgreen colaと142年愛され続けている三ツ矢サイダーという、フェーズのまったく異なる2つのブランドについてお話しをうかがえました。 また、green colaは海外で成功している「全部NO」というポジショニングを日本人のインサイトに合わせて再解釈するというプロセスについても話を伺いました。ブランディングは、ユーザーに新しい意味を届けることができなければ成功しません。「ただの甘い炭酸なら、既存のコーラでいいや」となってしまいます。そうした中で、「NO is Smart」という新しい文化をもたらすブランディングをされようとしている点が非常に興味深いです。
一方、140年以上も続いている三ツ矢サイダーは、パーパスを軸にその時々のインサイトを捉えながら進化し続けている。今日教えていただいたインサイトが、プロモーションにどう反映されるのかも、楽しみにしています。

米田:最後に、お二人の今後の展望を教えてください。
山上:日本のコーラ市場は現在飽和状態にありますが、その中で、飲み物だけの判断軸ではなく「NO is Smart」という若年層の価値観を体現する商品としてライフスタイルに溶け込んでいきたいです。この商品がまずは若年層に対してのニュースタンダードになることを目標にしているので、「Z世代や若年層全員が飲んでいるコーラはgreen colaだ」という世界を作りたいです
山下:三ツ矢サイダーが目指すのは、名実ともに真の国民的炭酸飲料になることです。
三ツ矢ブランドは認知率が9割近く、購入飲用経験が7~8割程度に及ぶような商品を主力にもつブランドです。一方、直近1ヵ月や1年以内に飲んだかという質問に対しては、3割を切ってしまう状況です。それはすごく寂しいことなので、「誰も嫌いじゃないよね」から、押し付けがましくない価値や「澄みきる瞬間」を提供して、まずは2030年に清涼飲料ユーザーの2人に1人が、三ツ矢ブランドを購入飲用してくださることを目指したいです。
頭の中で知っているブランドに留まるのではなく、年に1回は「三ツ矢サイダーがこんな体験をさせてくれたな」とできるだけ多くの方に思ってもらえるよう、頑張っていきたいです。

米田からの「インサイト活用」TIPS
- ブランディングとは、ただの製品・商品から、消費者にとって「これは他と違う」と認識してもらえるような「意味」を感じてもらえる「ブランド」へ育てていくマーケティング戦略である。
- ブランディングは、どんなインサイトに的をしぼって、どんな人にとってのどんな「意味」を持たせるかを軸にブランドコンセプトを作ることから始まる。
- インサイトは時代や国の違いによって変化するし、違ってくる。
- 100年以上も続くブランドは、時代に合わせて変わるインサイトをうまくとらえているからこそ、長く愛され続けている。海外ブランドが日本でも売れているのは、日本人のもつ微妙なインサイトの「意味合い」をとらえているからこそ成功しているのである。
