デンマーク発のフードロス削減アプリ「Too Good To Go」が、日本でも徐々に広がっている。日本での正式ローンチから約3ヵ月半で登録ユーザー数は50万人を突破。今回取り上げるクリスピー・クリーム・ドーナツをはじめ、ローソン、ドン・キホーテなどの大手リテーラーや、外食チェーンの「かっぱ寿司」など提携企業も都内店舗での導入を起点に広がりつつある。消費者にも、企業にも、社会にも“おいしい選択”を提供する「Too Good To Go」の、絶妙なブランド設計を紐解いていく。
AI時代こそ、ブランドの「核」が問われるように
AIの普及によって、情報収集、商品比較、コンテンツ制作、顧客対応のスピードは大きく上がっている。機能差が小さくなっていくAI時代においては、価格や機能に加えて、「このブランドは何を大切にしているのか」「社会や生活者とどのような関係を結ぼうとしているのか」といった社会性が、選ばれる理由の一部になりつつある。社会性がブランドづくりの重要な要素になっているのだ。
また、食品ロス削減、資源循環、地域貢献といった取り組みは、以前よりも生活者に受け入れられやすくなった。企業が社会課題に向き合う姿勢そのものに、強く異を唱える人は多くないだろう。
一方で、ブランドやマーケティング担当者からは「どうしても参加の広がりを欠いてしまう」「最初は良くても、続いていかない」といった声も聞かれる。そのギャップを埋めながら、ブランディングを実践するうえで示唆的なのが、デンマーク発のフードロス削減サービス「Too Good To Go」と、同サービスを導入したクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンの取り組みである。
フードロス削減を、お得で楽しい体験に変える
Too Good To Goは、デンマーク発のフードロス削減サービスだ。店舗で余ってしまった、まだ食べられる食品をサプライズバッグとしてアプリ上に出品し、ユーザーはそれを予約して、指定時間に店舗で受け取る。中身は受け取るまでわからない。その代わり、通常よりもお得な価格で購入できる。
Too Good To Go社によれば、サービスは現在、世界21ヵ国で展開されており、1.2億人以上の登録ユーザー、20万以上の加盟パートナーを持つ(2026年4月現在)。累計で6億食以上の食品ロス削減につなげているという。日本では2026年1月に正式ローンチし、2026年5月初旬時点で国内ユーザーは45万人、加盟店は約300店舗以上にまで拡大している。

この点だけを見ると、Too Good To Goは世界的に利用が広がる食品ロス削減アプリのように見える。だが、同社のプロダクトやマーケティングを分析していくと、その本質はもう少し広く捉えられる。
たとえば、Too Good To Goの日本でのタグラインは、「おいしい選択。」である。食べものとしておいしい。お財布にもおいしい。そして、環境や社会にとってもおいしい。そこには、社会課題を正面から説得するだけでなく、生活者が自然に参加できる体験へ置き換えようとする思想が読み取れる。
この点について、Too Good To Go Japanの大尾嘉代表はこう語る。
「Too Good To Goは、単なるフードロス削減の訴求というより、店頭に陳列された商品に別の流通方法を与え、新しい流通経路をつくり出す、という考え方をとっています。つまり、これまで設定した期限が来てしまい、廃棄していたものに別の居場所を提供するということ。まだ価値があるものを、経済合理性の観点から、より価値あるものにする視点が、店舗の食品ロスを考えるうえで重要だと思いました」(大尾嘉氏)
店舗にとっては、廃棄コストの削減につながるだけでなく、これまで廃棄していた商品から売上がたつ。消費者は物価高の中でお得に商品を購入できる。まさにwin-winのサービスだ。
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小口 裕(オグチ ユタカ)
株式会社ニッセイ基礎研究所 主任研究員
多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。持...
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