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【ニッセイ基礎研究所 解説】「共創」視点で再定義する「サステナブル・マーケティング」

「Too Good To Go」が創る新たな購買体験 フードロス削減と新規獲得を両立するブランド設計

廃棄コスト削減だけでなく、売上増加&新規顧客の獲得も

 導入後の成果だが、約1ヵ月で3割のフードロス削減を達成し、現在もその水準をキープしている。さらに、廃棄コストの削減、売上の増加だけではない、想定外の効果もあったという。

 「Too Good To Go Japan社から提供されたデータを見ると、Too Good To Go経由で購入した方の4割が新規のお客様でした。これは意外な発見でしたね。さらにその後、また食べたくなったと来店して下さるお客様もいらっしゃいます」(佐々木氏)

 食品ロス削減が、新規顧客接点にもなっている。社会性のある施策がブランド体験として設計されることで、店舗、顧客、ブランドの関係を広げていることがうかがえる。

 また、KKDJの店舗では、賞味期限を迎えて毎日廃棄されるドーナツをどうにかできないか、という声が従業員から以前より挙がっていた。そのような背景もあり、Too Good To Goの導入には、KKDJ社内でも前向きな共感が生まれているという。

【図2】クリスピー・クリーム・ドーナツにおけるCX(体験価値)への翻訳(クリスピー・クリーム・ドーナツ社のインタビュー内容に基づいてニッセイ基礎研究所で整理)
【図2】クリスピー・クリーム・ドーナツにおけるCX(体験価値)への翻訳(クリスピー・クリーム・ドーナツ社のインタビュー内容に基づいてニッセイ基礎研究所で整理)

社会性を、メッセージだけでなく導線として設計する

 Too Good To Goの事例から見えてくるのは、サステナビリティや社会貢献を広告コピーだけで完結させず、参加の導線、体験の質、継続の条件まで含めて設計することで、社会性がブランディング活動へとつながっていくという点である。Too Good To Goの大尾嘉代表は、「フードロス削減への貢献行動を、CX/顧客体験として設計する視点が大事」だと語る。

 また、KKDJの姿勢にも同じ考え方が見られる。

 同社は、Too Good To Goを単なる安売り施策として扱っていない。「サプライズボックス」という形式にすることで、選べないことを不便だけで終わらせず、ワクワク感として受け止められる余地に変えている。さらに、販売数に上限を設け、いつでも簡単に手に入るものにはしないことで、通常販売とのバランスやブランド価値にも配慮している。

 こうした設計は、サステナビリティに関するマーケティング施策に限らず、多くのCX設計に通じるのではないだろうか。社会性のある施策では、つい「正しいことだから続けてほしい」と伝えたくなる。ただ、生活者の日常を考えると、価格、時間、手間、心理的な抵抗が参加そのもののハードルになりやすい

 だからこそ、「フードロス削減を促進する」というブランド訴求に加えて、サービスとしては近くの店で、お得に、何が入っているか少し楽しみに受け取れる」という導線をつくる。そして、「気軽に使っていたら、実は少し良いことにもつながっていた」と感じられる喜びをつくっていく。

 社会性を押しつけるのではなく、日常の中で自然に感じられる濃度で設計すること。生活者にとっては参加しやすく、企業にとっては経済合理性があり、現場にとっても納得感が残すこと。Too Good To GoとKKDJの取り組みは、社会性のあるブランドを設計するうえで、こうした視点の重要性を示していると言えるのではないだろうか。

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この記事の著者

小口 裕(オグチ ユタカ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 主任研究員

多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。持...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/06/05 08:30 https://markezine.jp/article/detail/50790

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