大学卒業後、コンサルティング業界での経験を経て、現在は株式会社点灯夫代表。企業のコンサルティングやシステム設計業務の傍ら、セミナー講演活動、数多くこなしている。百式は2000年1月20日に開設。著書には、「ストレスフリーの整理術」「ストレスフリーの仕事術」(ともに監訳)などがある。
2000年当時の予想を裏切ったのは「携帯」と「ブログ」
─ 「百式」は、2009年1月20日をもってサイト開設から9年目となりましたが、その間に、新聞社や出版社などの商業目的サイトや個人のブログなど「ネット上での情報発信」を目的としたサイトが格段に増えたと思います。サイト開設当初からこの動きについては、予想していましたか。
個人や法人が情報を発信する媒体としてインターネットを利用するという流れは、2000年からアメリカの状況をみていたのである程度の予想はしていました。ただ、携帯の普及率とブログメディアの形態については少し予想が外れました。
ご存知のように携帯の世界では、ケータイ小説やプロフサービスなど様々な形のコンテンツが生まれ、すごいスピードで普及しています。正直、このスピードと規模で広まるとは2000年当時は思っていませんでした。一方、ブログについても、私が思い描いていた形態とは違った形で広まりました。
アメリカではある特定の分野に特化したニッチなブログや、2~3人で運営するブログ出版社などが立ち上がっています。同じように、日本でも専門分野のブログがポジションを確立すると予想していたのですが、専門的なブログメディアというよりは、あくまで人柄を売りにした"有名人の日記"という認識が日本では強いと思います。
"ネット化"の動きは正しい判断なのか
─ 「メディア運営」の視点からお話を聞かせてください。紙メディアやテレビの広告費の落ち込みは激しくなっています。このため、ネットメディア化を進め広告収入の置き換えを図るケースが増えていると思いますが、この動きは正しいと感じますか?
正しいかどうかという問いに対しては、ケース・バイ・ケースですね。ただ、個々の企業の利益率にもよりますので断定はできないですが、テレビの場合はネットメディアを作って広告収入の置き換えを図るという感じではなく、あくまでテレビ番組と連動させて相乗効果を狙った動きが多いと思います。一方、紙メディアは新聞と雑誌に分かれると思いますが、海外の動向を見ても新聞離れは明らかに進んでいますので、新聞は今後厳しいでしょうね。雑誌については、ネットとの提携がどうなっていくか、そこがまだ見えないのでなんとも言えないですね。
─ ネット化を推進しても、従来どおりの広告収入には届いていません。この現状についてどう感じますか?
既存のメディアビジネスとビジネスモデルがまったく違うので、当然だと思います。現状からすれば、メディアで広告ビジネスを行う上でのポイントは、"そのメディアはターゲット化されているのか"に尽きると思います。例えば「○○歳~○○歳の情報感度の高いビジネスマン」など漠然としたターゲットでは、ビジネスに直結させることは難しいという話をよく聞くようになりました。
アメリカの例ですと、例えば、「登山家」など特定のターゲットだけに絞ったメディアに対しクライアントは喜んでお金を払ってくれます。日本でもそうなってくるかと思います。
新聞社は、まずは原価削減を考えるべき
─ 話が脱線しますが、田口さんが新聞社の社長であれば、どのようにネット化を進めますか。
難しい質問ですね(笑)。あくまで個人的な意見ですが、まずは原価の削減を考えます。紙メディアで培った「編集能力」という力を伸ばしつつ、文章を書ける人はどんどんアウトソースしてもよいのではないでしょうか。新聞社を経営したことがないのでわかりませんが、人件費が今後重くのしかかってくるのではないか、と想像しています。