生活者の「好き」をとりまく環境は今、かつてないスピードで変容し続けています。博報堂 生活者発想技術研究所では、推し活当事者でもある研究員が、一般生活者の推し活・オタ活当事者とともにインサイトを継続的に研究するプロジェクト「偏愛会議」を2025年12月に立ち上げました。本記事では、偏愛会議の第1弾レポートをもとに、生活者の「好き」にまつわる消費行動やインサイトがどのように変化しているのか、企業はその変化にどう向き合うべきかについて、特に推し活・オタ活の観点から解説します。
アイドル、二次元……多様な「好き」があることが当たり前に
誰かを「推す」ことや、なんらかの「界隈(「好き」や興味関心を軸に生活者が自発的に形成する集団)」に所属するといった行動は、元々は10~20代の若年層に見られる潮流として話題になりました。ですが、今や10~60代全体で見ても「推しているモノ・コトがある」「自分が所属している界隈がある」人が過半数を上回っています(図表1)。
もはや「好き」があることは若い人のみの現象ではなく、幅広い年代で当たり前になりつつあると言えるでしょう。
また、「好き」の対象の多様化も起きています。
「推しているモノ・コト」の内容を複数選択で聴取した結果を見ると、「国内のミュージシャン・アイドル」「日本国内のアイドルグループ(団体)」といった「人」を押さえる形で「漫画/ゲーム/アニメのキャラクター」が1位になったほか、該当者2~5%程度の項目がロングテールで広がっています(図表2)。なかには「国や町」「友達やクラスメイト、職場の同僚」「植物」など、一見「それは『推し』なの?」と思ってしまいそうな意外な項目も多く含まれる結果に。
元々「推し」はアイドルを応援するファンの間で広まった言葉でしたが、いまや身近な人やモノ・実在しない概念やキャラクターまで、幅広い対象に対して使われているのです。
どんな「好き」も、自由に発信できる時代
多様な「好き」があることが当たり前になっただけでなく、それをオープンに表明することも当たり前になりつつあることもデータに表れています。以下は15~29歳の若者における「自分が何を推しているか、周囲に知られたくない」という項目の結果です。家族・友人・恋人のいずれについても、「知られたくない」は3割程度にとどまっています(図表3)。
また、「今行っている推し活の具体的な行動」も2022年と2025年で比較できる形で聴取しています。まだコロナ禍の影響が強かった2022年に比べ、2025年は「情報を調べる・収集」などのオンラインで完結する行動が低下傾向にある一方で、「グッズを身に着ける・持ち歩く」「部屋にグッズを飾る」といったオープンな行動が上昇しており、「自分の推しを周囲の人に知られてもかまわない」風潮が広がっていることがわかります(図表4)。
ここまで見てきたように、現代の生活者は、二次元コンテンツをはじめとした多様な「好き」を持つことも、それを表明することも一般的になっています。その背景を偏愛会議に所属する一般生活者の推し活当事者とディスカッションしたところ、複数の要因があげられました。
一つは情報環境の変化です。音楽や動画のサブスクリプションが浸透したことで、ドラマと同じように「みんながこのアニメを見ているから見てみよう」「主題歌がいいからアニメを見てみよう」といった動線をたどりやすくなったことが影響していると考えられます。
また、30~40代のメンバーを中心に、2000年代初頭頃までにみられた「オタク」に対するネガティブなイメージがだんだんと払拭され、アニメや漫画などに熱中することが「ポジティブなこと」と捉えられるようになったことも影響しているのではという意見も複数挙がりました。
※生活者をとりまく「好き」の過去30年の変遷については、レポート『これからの「好き」という気持ちの行方 スキステナブル-楽しく「好き」でい続けるための新しいマインドセット-』のP21~23で詳しく整理しています。ご興味のある方はこちらもご覧ください。
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十河 瑠璃(ソゴウ ルリ)
2013年博報堂入社。管理部門を経て、生活総合研究所で消費行動を中心とした生活者研究に従事。その後、マーケティングプランナー・ディレクターとして自動車や商業施設、消費財などの様々な領域のマーケティングを担当。2024年より現研究所設立に伴い現職。自身がアニメを中心とした様々な界隈に関心を持ってきた経験から、「好き」や興味関心を軸に生活者が自発的に形成する「界隈」に関する研究レポート「Future Evangelist Report vol.3 界隈消費」を発表後、2025年12月に強い「好き」を持つ生活者を当事者とともに研究するコミュニティ型プロジェクト「偏愛会議」を共同代表として設立。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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