これからの推し活・オタ活のキーワード「スキステナブル」
ここまでご紹介した変化の根底には、共通して「SNSの広がりによって、他者と比較する目線が強まっている」ことが影響しています。
本来主観的なことであるはずの「好き」が比較にさらされることにより、無理な消費をしてしまったり、他の人とのトラブルに巻き込まれるといった苦い経験をしてきた生活者は、「依存しすぎず、無理をせず、推しも自分も周囲も大切にしながら、幸せな推し活をできるだけ長く続けたい」と考えるようになっています。我々偏愛会議では、こうした生活者のスタンスを「スキをサステナブルに楽しむ」という意味合いから「スキステナブル」と名付けました。
では、「スキステナブル」を求める生活者に対して、企業はどのように向き合えばよいのでしょうか。最も重要なのは、「幸せな推し活を長く続けたい」生活者をサポートするパートナーとして認識される存在になることです。
そのためには、これまで多く見られがちだった「煽る」アプローチで無制限に課金させようとするのではなく、たとえば「一定額(現実的な金額で設定)をかけると全種類そろう」などの形で推しを応援したい生活者の想いに「報いる」設計を行うことで、「推していてよかった」と思える推し活・オタ活ライフを設計することが重要です。
また、その際には「点」の関わりで一時の話題を作るのではなく、「線」=継続的に関わる姿勢も重要です。「点」の関わりでは「なぜこの企業がコラボするのか」の必然性が生まれにくく、施策が記憶に残らなかったり、場合によっては「『コラボをすれば買うだろう』と足元を見られているのでは」という疑念を持たれたりする可能性もあります。たとえば「自社とそのコンテンツの間には〇〇という共通点・重なりがある」というような形で、自社が関わる理由や文脈、すなわち生活者の共感を引き出すナラティブを設計することも求められるでしょう(図表9)。
あらゆるものが効率化され、AIが最適な答えを提示してくれる時代だからこそ、生活者にとって自発的に選び取る「好き」という衝動の価値は、これからも高まっていくはずです。生活者がコミュニティごとに持つ細やかな文脈に寄り添い、その活動をサポートするパートナーになることができれば、企業は深く長い信頼と支持を得ることができるでしょう。偏愛会議では、これからも生活者と企業の新たな関係性をデザインすべく、「好き」にまつわる生活者動向を追い続けていきたいと思います。
