「質の高いコンテンツ」は生活者のインサイトから生まれる
前編では、首都圏の食品スーパー1チェーンのID-POSデータを解析し、SNSショート動画の再生数と店頭売上の間に統計的に有意な相関があることがわかりました。さらに、リーチ量に加えて保存率の高さが購買への寄与を押し上げることも示されました。
後編となる今回のテーマは、成果に寄与する「質の高いコンテンツ」を生み出す手法です。
「デリッシュキッチン」のInstagram公式アカウントでは、年間約1,200件の投稿を行っています。直近1年間(2025年7月〜2026年6月)のデータを分析した結果、オーガニックのリール動画310本における1本あたりの再生数(中央値)は約152万回(※1)に達しています。一般的な企業アカウントがInstagramリールで100万回再生を超える動画は全体の0.5%程度(※2)との調査があるなか、その水準を大きく上回るコンテンツを安定的に生み出すことができるのが当社の特徴です。
※1:2025年7月~2026年6月に配信したInstagramリール310本の再生数中央値(タイアップ・自社サービス告知等を除く)
※2:「Instagram人気ランキング」を運営する株式会社ユーザーローカル(Social Insight)による独自調査。同社が集計する国内企業アカウントのリール動画全体に占める割合(2026年7月時点)
もちろん、500万超というフォロワー基盤があることは前提です。しかし、フォロワー数だけでリーチが決まるわけではありません。フォロワー基盤が「初速(再生数の下限)」を担保し、そこから先の伸びは、視聴維持や保存、シェアといった「投稿に対するエンゲージメント」が左右します。実際、同じアカウントからの発信であっても、質が伴わないコンテンツは再生数の中央値を大きく下回ります。
では、なぜ安定的に高いパフォーマンスを生み出せるのか。支えているのは、生活者の行動データです。「デリッシュキッチン」では、検索・視聴・お気に入り・調理といったメディア上で行われるあらゆる調理行動が記録されており、当社では、これに食品卸・小売との連携で得られる実店舗の購買データを掛け合わせたものを「食生活行動ビッグデータ」と呼んでいます。
生活者が「今何に関心を持ち、これから何を作ろうとしているのか」を捉え、その関心に応えるコンテンツを設計する。インサイトを捉える力と、それをコンテンツに翻訳する力。この2つが問われます。これは多くのBtoCブランドに共通すると言えるでしょう。今回は当社での実践を一つの例として、その実現方法を紐解いていきます。
食生活行動ビッグデータを、コンテンツ設計に翻訳する
食生活行動ビッグデータからは、特定食材の検索推移や組み合わせが見え、生活者の関心の在り処やレシピの方向性を見定めることができます。
一方、「どう見せれば最後まで視聴され、保存されるか」はアプリのデータだけではわかりません。SNSに適した表現へ「翻訳」する力が必要になります。デリッシュキッチンでは、月間100本以上の投稿から得られる反応データを元に見せ方を判断しています。
また、複数の企画者が高いクオリティを維持するには、属人的な感覚ではなく、判断の根拠を言語化し共有する必要があります。そこで私たちは、生活者が「見続ける」「保存する」動機を分解し、情報の届け方までを含めて組織の共通言語として構造化しています。
