人の想起とAIの推薦は、半数のCEPで入れ替わる
セッション終盤、田岡氏はAI時代のブランド成長に話題を移した。
AI時代、「人の想起」と「AIの推薦」を両輪で獲得していくことが重要だというのが、田岡氏の主張だ。AIを巨大なインフルエンサーと捉えれば、AIに推薦されることは、想起を獲得することと同様に重要である。そしてCEP起点で考えるべき理由は、生活者の行動が変わったことにある。
「これまでは、こういう背景でこれが欲しい、だからこのキーワードで検索しよう、と考えていました。今は、その背景から直接AIに相談し始めています。すると、AIの方から『それならこのカフェがいい』『この歯磨き粉がいい』と薦めてくれる。AIにおいてもカテゴリーエントリーポイントが大事なのです」(田岡氏)
AIとの対話は、キーワードではなく文脈、つまりCEPそのものになる。田岡氏はX-Opsとの共同研究として、CEPごとに人の想起とAIの推薦がどう違うかを調べ始めている。講演では、その結果も先出しで公開された。
調査した3カテゴリーでは約半数のCEPでトップブランドが入れ替わっていた、などマーケターにとって示唆に富む内容が多かった。この詳細は『【実データ公開】「AIの推薦」と「人の想起」で選ばれるブランドは変わる。カフェ・歯磨き粉のCEP調査』で紹介している。
AIO/LLMOも、キーワードではなくCEP起点で考える
人間の想起とAIの推薦にズレが生まれる要因として、田岡氏は2つを挙げる。1つは非言語情報だ。人の想起にはつながっていても、AIには読み込まれにくいコンテンツ・アセットがある。もう1つはコンテンツの整備状況で、AIサービスごとに参照するソースやコンテンツの傾向が異なる。そこに自社の情報が置かれていなかったり、整理されていなかったりすると、推薦されない。
だからこそ、AIO/LLMOもキーワードではなく、CEP起点で取り組むべきということが言える。CEPごとに、人の想起とAIの推薦のギャップを把握し、そのギャップがどのコンテンツ、どのソースに起因するのかを特定して手を打つ。もちろん、すべてのCEPを即座に取りにいく必要はない。人の想起として取りたいCEPと、AIに推薦されたいCEPを、自社として選び取ることが前提になる。
「お客様にコミュニケーションが届き、自社ブランドが想起されたのに、AIに相談したときに違うブランドを推薦されてしまっては、もったいないですよね。CEP起点の一貫した戦略で、人に想起されやすいコミュニケーションと、AIに推薦されやすいコミュニケーションを同時に実現していく。この解像度に、ブランドごとの差が出てくるのではないでしょうか」(田岡氏)
人の想起とAIの推薦は、いまのところ別々のレースのように見える。だが生活者の行動が「キーワード」から「文脈」へ移るなら、両者を貫く共通の単位はCEPになる。田岡氏は、CEPの理解は今後、マーケティングやブランディングの「インフラ」になると語った。競合が理解していないとしても、自社が理解していなければ、それは戦略の穴になる。
自社はどの場面で人に思い出されているのか。そして、どの場面でAIに薦められているのか。この2つの問いに、差分まで含めて答えられるかどうか。その解像度の差が、次のブランド間格差を生むのかもしれない。
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落合 真彩(オチアイ マアヤ)
教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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