PDCAが回らないのはなぜ?
ビービットは、10年近く企業のWebサイト戦略のコンサルティングを行っており、中島氏も創業以来コンサルタント活動をしてきた。中島氏は「300を超えるWeb担当者の方とお話をしてきた中でよく聞く話が『継続的に効果が上がっていかない』や『PDCAがうまく回らない』などです。せっかく高機能なアクセス解析ソフトは導入してしっかりデータを取っても改善できず、またそもそも時間がなくてどう分析するべきかわからないという方がほとんどです。コンサルティングをしていく中で、大体同じようなアドバイスをしていることに気がついたのが、これからお話します」と切り出した。
Webサイトの改善は、時間軸でみると2つのフェーズに分けられる。1つめはリニューアルにおける抜本改善のフェーズと、もう1つはリニューアル後の日々の改善活動のフェーズで、中島氏は後者を“運用チューニング”と呼んでいる。
また中島氏は、これら2つのフェーズでは違った取り組みをしなければならないとし「リニューアルの際には、社内各部署や弊社のようなコンサルティング会社や制作会社、システム会社と一緒に行うので、時間をとりしっかり分析できます。それに対して運用チューニングのフェーズでは、キャンペーン企画や役員へのプレゼン、部署間の伝達、発注業務など日々のタスクがたくさんあり、時間がとれません」と各フェーズでの状況の違いを説明する。
運用チューニングのフェーズでは、日々の業務に追われて深い分析を行う時間がとれず、PDCAにおける改善アクションに移れない状況が多いという。そこで中島氏は、限られた時間のなかで改善できるところにフォーカスをすべきだと指摘。フォーカスすべき箇所は事業によって異なるが、集客施策やランディングページ、サイトの入り口ページの部分などであるとした。
加えて中島氏は「改善領域を絞り込めばPDCAが回るかというとそんなに甘くはありません。お客さまにはさらに指標を絞り込むようにお願いしています。皆さんがよく言うPVや滞在時間は指標から省いています。なぜなら、そこから改善案につなげていくにはかなり深い分析が必要だからです」と、成果に直結する指標を絞り込む理由を語った。
見るべきポイントは、ユーザー行動のシナリオ
絞り込んだ指標をどう見ていけばよいのか。中島氏は「一般的な指標の見方で、例えばクリック数やコンバージョンレートを見ると、単純に『レートがよかったね、悪かったね』『直帰率は最近よい』というお話を聞きます。こういう見方をしていても、明日からの改善にどうやってつなげるかというと答えが出ずに『だから何?』となってしまいます。我々の場合、サイトの流入経路別に一貫したユーザーの体験を評価するための各指標に注目します。指標はサイトのパフォーマンスを見るためのものであり、パフォーマンスとは、訪問者にいかにビジネスゴールまでたどり着いてもらえるか、いかによいシナリオになっているかを評価すべきです」と説明を続けた。
流入経路別のゴールへの到達シナリオをみていくと、課題が浮かびできるところから改善に着手すればPDCAサイクルがうまくまわる。中島氏は、その裏付けとして、同社が手がけたNECのERPパッケージ製品のページの事例を紹介した。運用チューニングを行った結果、資料請求数が12倍となったという。中島氏は「取り扱い製品の価格は1,000万円~1億円で、その申し込みが12倍ですから、マーケティングの成功事例としてかなり有名になっています」とした。
続いて中島氏は、BtoCの事例として、コンバージョンレート5倍になった大手FX会社やカード会社、信託銀行、健康食品、警備などの申し込み数などを飛躍的に向上させたという。中島氏は「先ほどの考え方は机上の空論ではなくて、現場の中で見つけた現場で生きる考え方です。かつここからは具体的にどうすべきかという実践的な話をします。この話もこの考え方を方法論化したような話ですのでぜひ聞いてください」と、運用チューニングの実践方法についての解説を促した。